働きながら未経験から転職を目指す場合、週10時間前後を約6か月続けて、合計約250時間が編集部の計画の目安です。平日は30分から1時間、休日は2〜3時間を学習にあてると、この時間になります。
ただし、この時間数は公的な基準ではなく、達すれば採用されるという数字でもありません。企業の選考では、時間の長さよりも、その時間で何を作り、どう続けたかが見られます。
平日の仕事のあとに残る時間は、平均で3時間余り
まず、社会人の1日にどれだけ余白があるかを、公的な統計で確認します。総務省統計局の「令和3年社会生活基本調査」(2021年10月)には、平日の生活時間が載っています。
テレワーク以外の働き方をしている有業者の平日は、仕事が8時間24分、通勤が1時間7分、睡眠が7時間14分です。家事は52分、育児は7分、食事は1時間26分、身の回りの用事は1時間19分です。
これらを24時間から引くと、残りは約3時間25分になります。この3時間25分に、テレビや休養、買い物、移動、趣味、学習のすべてが入ることになります。
残りの時間の内訳も、同じ調査にあります。
- テレビ・ラジオ・新聞・雑誌:1時間6分
- 休養・くつろぎ:1時間22分
- 趣味・娯楽:19分
- 学習・自己啓発・訓練(学業以外):4分
数字は有業者全体の平均で、家庭の状況によって大きく違います。育児や介護がある人は、この残りがもっと少なくなります。
学習に使っている平均は、平日で4分です。同じ調査で、テレワーク(在宅勤務)をしている人は10分でした。
つまり、勉強の時間は、何もしなければ生まれません。残りの時間のどこかを、意識して学習に付け替える必要があります。
学ぶ社会人は多いが、仕事に役立てる目的の人が中心
同じ調査には、1年間に「学習・自己啓発・訓練」をした人の割合(行動者率)もあります。10歳以上の全体で39.6%で、2016年の調査から2.7ポイント上がっています。
年齢別に見ると、30〜34歳が47.3%、35〜39歳が45.4%です。2016年から30〜34歳は7.1ポイント、35〜39歳は6.6ポイント上がっており、30代で上げ幅が大きくなっています。
種類別では、男性の最多が「パソコンなどの情報処理」で20.1%、女性ではこれが13.0%で2番目でした。この種類の目的は、「現在の仕事に役立てるため」が最も高くなっています。
ここから分かるのは、仕事のために学ぶ人は珍しくないということです。ただ、これは情報処理全般の数字で、プログラミングだけの数字ではありません。
また、この調査は学習した人の割合を示すもので、転職までに必要な時間を示すものではありません。必要な時間は、次の節のように自分で置いて、実際に進んだ分で見直します。
転職までの学習時間は、週の時間から逆算して置く
転職に必要な勉強時間について、公的な基準や統計はありません。そこで編集部では、次の2つの区切りで計画を置いています。
- 最初の作品を作り切るまで:約120時間(HTML/CSSと1つの言語の基礎、簡単なアプリ1つ)
- 応募に出せる状態まで:約250時間(作品を1〜2つ公開し、学習の記録も残す)
最初の3か月の順番は、未経験エンジニアは何から始める?最初の3か月の順番にまとめています。ここでは、その先を含めた時間の組み方を扱います。
週の時間を3通りに置くと、期間は次のようになります。
| 週の学習時間 | 平日・休日の配分の例 | 約250時間までの期間 |
|---|---|---|
| 約7時間 | 平日30分×5日、休日各2時間 | 約8か月 |
| 約10時間 | 平日1時間×5日、休日各2.5時間 | 約6か月 |
| 約15時間 | 平日1.5時間×5日、休日各3時間45分 | 約4か月 |
自分の生活で無理なく続く行を選ぶのが、いちばん大切です。15時間の行は短く見えますが、残業や家庭の予定で崩れると、続かずに止まります。
迷うときは、7時間か10時間から始めて、2週間やってみます。続いたなら1段階上げ、苦しければ下げます。
期間が延びるのは構いませんが、決めないで延ばすのは避けたいところです。20代後半から30代で働きながら学ぶ人は、30代未経験からエンジニアになれる?採用側の見方と進め方で、年代別の採用の実績と学習期間の考え方を読めます。
平日と休日に、時間を作る3つの方法
時間は、足すより、すでにある時間を付け替えるほうが続きます。1日の余白が約3時間25分なら、そのうち30分から1時間を動かす設計です。
平日は、時間帯を固定します。夜に疲れが出る人は、出勤前の30分から始める方法もあります。
- 朝:出勤前に30分。前日に書いたコードを読み返し、1か所だけ直す
- 通勤中:スマートフォンで用語や文法を読む(コードは書かない)
- 夜:食後に30〜60分。新しいことを1つだけ進める
通勤の1時間7分は、座れる人にとっては使いやすい時間です。立ちっぱなしの人は、音声や読み物にとどめて、書く作業は家で行います。
休日は、まとまった時間を使って、作品づくりを進めます。休日に3時間を確保する日を週に1日だけ決めて、もう1日は休むか、30分だけにします。
休日に長く学ぶ日を2日続けると、翌週が崩れやすいので、休養も計画に入れておきます。休養・くつろぎの時間は、平日で1時間22分あり、削りすぎないほうが続きます。
付け替えの候補は、テレビなどの1時間6分や、趣味・娯楽の一部です。全部を学習にする必要はなく、毎日15分ずつ動かすだけでも、週に約1時間45分になります。
採用する側の視点:企業は勉強時間の長さを見ていない
ここからは、運営会社の採用支援の現場で見ている、採用担当者の視点です。応募書類に「学習時間300時間」と書いても、それだけでは評価の材料になりにくいのが実情です。
レバテックの「IT人材白書2026」は、企業のIT人材採用担当者1,000人に2025年11月に聞いた調査です。エンジニア未経験者を採用している企業は28.4%、採用を検討中が45.0%でした。
未経験者を採用している担当者284人に課題を聞くと、最多は「スキルや能力の見極めが難しい」で51.1%でした。次いで、「教育・育成の工数がかかる」が32.4%、「技術を習得するまでに時間がかかる」が29.9%です。
採用担当者は、時間数ではなく、入社後に伸びる人かどうかを見極めようとしていると読めます。時間数は自己申告なので、これだけでは見極めの材料になりません。
採用担当者は、選考で次の3点を確かめます。
- 作ったもの:動くものがあり、URLやコードで確認できるか
- 継続の記録:学習やコミットの記録が、一定の間隔で続いているか
- 詰まったときの解決:エラーに当たったとき、どう切り分けて、何を試したか
3つ目は、面接で特に聞かれます。「どこで詰まりましたか」という質問に、原因の仮説、試したこと、直った理由を順に話せる人は、入社後の育成の見通しが立ちます。
AIコーディングツールを使って作った場合も、説明できる範囲が評価の対象です。作ったものの見せ方はAIで作ったポートフォリオは評価される?分かれ目と書き方に、学ぶ意味の考え方はプログラミングを学ぶ意味はAI時代にもあるか?にあります。
時間数を書くなら、期間と頻度で書きます。「2026年4月から約6か月、平日は毎日30〜60分、休日は週1日3時間」のように書くと、続いたことが伝わります。
学習中から応募の準備を並行する
時間を作ることと同じくらい、応募を始める時期を先に決めることが大切です。学習を終えてから応募しようとすると、終わりが見えず、延びやすくなります。
応募の準備は、学習の4か月目ごろから始められます。次の3つは、学習と並べて進められます。
- 求人票を読み、歓迎スキルに共通する言葉を書き出す(エンジニア求人票の見方)
- 作品の説明文と、学習の記録を整理する
- 職務経歴書に、前職の仕事を「何を判断したか」で書き直す
応募から内定までの全体の流れは、エンジニアの転職の流れと期間にあります。
学習のペースが落ちたとき、求人の探し方や応募の順番に迷うときには、転職エージェントに相談する方法もあります。レバテックの同じ白書で、転職経験があるIT人材1,648人(20〜59歳、3,000人のうち)が使った手段は、転職エージェントが39.1%で最多でした。
働きながら学ぶ人は、平日の面談の時間が取りにくいため、オンライン面談や夜間の対応があるかを確認しておくと動きやすくなります。選び方の基準はおすすめの転職エージェントにまとめています。
時間を確保するために、公的な制度を使う選択肢もある
働きながらの学習では時間が足りないと感じたら、仕事を調整して学ぶ方法もあります。ただし、退職を前提にした話なので、生活費の計画と一緒に考えます。
厚生労働省のページによると、公共職業訓練(離職者訓練)の訓練期間は概ね3か月〜2年です。求職者支援訓練は、1コース2か月〜6か月で、一日3時間の短時間のコースもあります。
求職者支援訓練は、ハローワークで相談して、受講の要件を確かめてから申し込みます。受講料はかかりませんが、テキスト代などは自己負担です。
退職して学ぶと、収入が止まる期間が生じます。仕事を続けながら週10時間の計画を回せるなら、まずその形から試すのが、見通しを立てやすい進め方です。
今日からできること:1週間の時間の棚卸しと、学習の記録
最後に、今日から始められることを2つ挙げます。どちらも、道具はスマートフォンのメモだけで足ります。
1つ目は、1週間の時間の棚卸しです。手順は次のとおりです。
- 直近の1週間を思い出し、平日と休日の「自由に使えた時間」を30分刻みで書き出す
- そのうち、テレビや動画、SNSなどに使った時間を、別の色で囲む
- 囲んだ時間のうち、学習に付け替えられるものを、平日に30分、休日に2時間分だけ選ぶ
最初から完璧に埋めなくて構いません。毎週、同じ時間に同じことをするほうが、続いたときの手応えが大きくなります。
2つ目は、学習の記録です。毎回、次の3行だけをメモに残します。
- 日付と、学習した時間
- やったこと(例:ログイン画面を作った)
- 詰まったことと、直した方法(なければ空欄)
3つ目の行は、面接で聞かれる「詰まったときの解決」の材料になります。3か月分たまった記録は、そのまま応募書類と面接の話の材料になります。
記録が1か月たまったら、時間の計画を見直します。想定より進んでいれば、応募の月を前に出せます。
遅れているときは、時間を増やす前に、作る範囲を小さくします。最初の作品を1画面のアプリに絞るだけでも、公開までの時間は大きく減ります。
学ぶ時間は、平均では生まれない時間です。それでも、週10時間を6か月続けた記録と、公開された作品1つがあれば、採用担当者に見せられる材料になります。



