エンジニアの転職は、準備から入社までで約3か月が目安です。dodaは、活動開始から内定までを平均2〜3か月、希望入社日の3か月前から始めることを案内しています。
進め方は「準備」「応募」「面接」「内定」「退職・入社」の5段階です。段階ごとに、やることと、企業が見ているものが違います。
先に全体像:5段階の期間とつまずきやすい点
dodaの転職スケジュールの案内をもとに、エンジニアの転職に当てはめて表にしました。
| 段階 | やること | 期間の目安 | つまずきやすい点 |
|---|---|---|---|
| 1 準備 | 経歴の棚卸し、転職理由と条件の整理、求人・企業の情報収集 | 約1.5週 | 転職理由が「不満」だけで終わる |
| 2 応募 | 職務経歴書の作成、複数社への並行応募 | 約2週 | 1種類の書類を全社に使い回す |
| 3 面接 | 書類通過後の面接(回数は企業で違う) | 4〜5週 | 在職中の日程調整 |
| 4 内定 | 労働条件の確認、承諾か辞退かの判断 | 約1週 | 条件を書面で見ないまま決める |
| 5 退職・入社 | 退職の申し出、引き継ぎ、入社準備 | 4〜5週 | 退職日が決まらず入社日がずれる |
期間は目安で、人によって前後します。在職中に動く場合は、面接の日程と書類づくりの時間をどう取るかが、最初の課題になります。
dodaは、特別な事情がなければ、収入が途切れにくく現職と比べられる在職中の活動を勧めています。
この先は、段階ごとに、やること・つまずきやすい点・企業が見る点を順に説明します。
準備①:棚卸しは「経験・環境・条件」の3列で
最初の約1.5週で、次の3列を書き出します。紙でも表計算でも構いません。
- 経験:担当したシステム、使った技術、役割、数字で言える成果
- 環境:今の職場で合っていること、合っていないこと(開発体制、評価、働き方、技術を選べる範囲)
- 条件:次に譲れないこと(年収の下限、勤務地とリモート、扱う技術、チームの規模)
転職理由は「不満」で止めず、「何を満たしたいか」に言い換えます。たとえば「保守に追われて残業が多い」は、「新規開発に時間を使える環境がほしい」に直します。
言い換えた理由は、面接で聞かれる「なぜ転職するのか」の答えの土台にもなります。
年収の期待も、この段階で整えておきます。厚生労働省の令和6年「雇用動向調査」(2025年8月公表)では、1年間の転職入職者のうち、前職より賃金が増えた人が40.5%、減った人が29.4%でした。
全産業の数字で、IT職種に限ったものではありませんが、転職すれば年収が上がるとは限らないことは分かります。年収の下限は、応募の前に決めておきます。
条件には優先順位をつけ、3つ以内に絞ります。全部を満たす求人は少なく、絞らないと応募先がなくなるためです。
未経験から目指す人は、「経験」の列に学習と個人開発を書きます。入口の職種は未経験からエンジニアはAI時代でも目指せる?で、作品の見せ方はAIで作ったポートフォリオは評価される?で整理しています。
棚卸しでつまずきやすいのは、次の3つです。
- 転職理由が不満だけで、次に何を求めるかがない
- 条件が多すぎて、応募できる求人が残らない
- 棚卸しの前に求人を見始め、基準がないまま迷う
準備②:情報収集は、3つの窓口を使い分ける
求人の探し方は、大きく3つあります。
| 窓口 | 特徴 | 向く場面 |
|---|---|---|
| 求人サイト | 自分で検索して応募する | 条件が固まっていて、企業を自分で比べたい |
| 転職エージェント | 面談で希望を聞き、求人紹介、書類と面接の支援、条件の交渉まで担う | 求人を絞り込めない、書類や面接の支援がほしい |
| 企業への直接応募・カジュアル面談 | 採用サイトから申し込む。選考の要素がない面談を設ける企業もある | 行きたい企業がすでにある |
エンジニア向けの市場は、求人が多い状況です。dodaの転職求人倍率レポートでは、2026年8月の全体が2.86倍、エンジニア(IT・通信)が12.04倍でした。
求人が多いことと、自分が選考を通ることは別の話です。応募先は、棚卸しの条件と経験に合うものに絞ります。
エージェントの流れは、IT特化の1社の公式ページが示しています。登録のあとにアドバイザーが対面またはオンラインでヒアリングし、希望に合う求人を紹介し、書類と面接を支援し、給与などの条件交渉も担うという流れです。
おすすめのエージェントは転職エージェントのページにまとめています。選び方の基準を知りたい場合は、ITエンジニア転職エージェント6社を比較を読んでください。
カジュアル面談は、企業によって位置づけが違います。たとえばアイスマイリーの採用サイトは、選考の要素を含まない、オンラインで30〜45分の面談として案内しています。
求人票とカジュアル面談では、次の4点を確かめておくと、応募するかどうかを決めやすくなります。
- 技術スタックと、その選定を誰がどう決めているか
- 開発体制(チームの人数、役割分担、レビューの仕組み)
- 評価と昇給の決め方
- AIツールの扱い(使ってよい範囲と、確認の手順)
応募:書類は初版を作り、応募先ごとに直す
応募の約2週間で、職務経歴書の初版を作り、複数社に並行して出します。dodaも、複数社への並行応募を勧めています。
書類は、読み手が最初に見る資料です。dodaが2025年9月に、2024・2025年度に中途採用を行った企業の採用担当者2,000人へ行った調査では、職務経歴書で最も重視する項目は「職務経歴・職務内容」の43.4%でした。
技術系(IT・通信)に絞ると、「職務経歴・職務内容」が45.0%、「活かせる知識・スキル」が22.3%です。
担当者がマイナスの印象を持つのは、「ミスや誤字・脱字が多い」の47.2%、「応募要件に合致しない」の45.1%でした(複数回答)。
書類は、経験を書く前に、応募要件との重なりが読み取れるかで見られています。書き方の詳細はエンジニアの職務経歴書の書き方にまとめました。
AIで書類を整える人が増え、読み手の受け止め方も変わっています。SHIFT AIが2026年5月に採用担当者503名(うち中途採用担当248名)へ行った調査では、中途採用担当の52.0%が、AIで書いたと判断した書類で選考を落とした経験がありました。
AI書類と判断する理由の1位は、「表現は洗練されているのに、具体的なエピソードや数字が伴っていない」で、中途採用担当では57.8%でした(複数回答)。
Anthropicの応募者向け案内も、最初の下書きは自分で書き、推敲にAIを使うよう求め、実際にはない経験をAIに作らせることを禁じています。AIの経験の書き方は、職務経歴書にClaude Codeをどう書く?に分けて書きました。
同時に進める選考は、面接の日程が重ならない範囲で、3〜5社程度が編集部の目安です。数を増やすほど、1社ごとの準備が薄くなります。
採用する側は、各段階で何を見ているか
書類と面接で、企業が見ているものは違います。運営会社の採用支援の現場での見方を、表にまとめます。
| 段階 | 企業が見ていること | 落ちやすい出し方 |
|---|---|---|
| 書類選考 | 募集要件に合う経験か。担当範囲と役割が読み取れるか | 技術名の羅列。役割が分からない |
| 一次面接 | 転職理由と志望動機がつながっているか。経歴を自分の言葉で説明できるか | 理由が不満だけ。経歴の読み上げ |
| 技術面接・課題 | 技術的な判断の理由を説明できるか | 結果は言えるが、選んだ理由が言えない |
| 最終面接 | 入社の意思、条件のすり合わせ、働き方の合致 | 条件を聞かれて曖昧に答える |
運営会社の採用支援の現場では、書類選考で迷う書類の多くは、経験が足りないのではなく、経験が読み取れない書類です。
dodaの同じ調査も、採用担当者は経験やスキルが自社の職務や課題に役立つかを見ていて、職務経歴書では経験と実績のマッチング、志望動機との整合性が主な確認点だと整理しています。
AIの経験を見る企業も増えています。ファインディが2025年7月に、同社のサービスを使う企業220社へ行った調査では、AI技術・ツールの活用経験を候補者の評価で重視する企業が57.0%で、2月の前回調査の18.1%から増えました。
選考の形も変わり始めています。カミナシのエンジニアブログ(2026年9月)は、AIで作られた提出物の精度が上がり、提出物から本人の技術との相性が分からなくなったと書いています。
同社の開発チームは、持ち帰り課題とオンラインのコーディングテストをやめ、設計を題材にしたライブのオンライン面接へ切り替える方向だとしています。
こうした面接では、結果より判断の理由を、その場で自分の言葉で話せるかが問われます。AIの使用を認める選考の例は、コーディングテストでAI使用OKの企業は何を見る?で表にしています。
面接:4〜5週で回す段取り
面接は、書類が通ってから内定までの約4〜5週が目安です。回数と形式は企業で違うため、応募する前に選考の流れを確かめます。
たとえばアイスマイリーの採用サイトでは、書類選考、オンラインの一次面接、本社での二次面接と社内見学、内定という流れで、面接は全2回と案内されています。
準備するのは、次の3つの答えです。
- 転職理由:棚卸しで言い換えた、「何を満たしたいか」
- 志望動機:その企業でなければならない理由。事業、技術、開発体制のどれに惹かれたか
- 経験の説明:課題、取り組み、成果を、判断の理由つきで話せる案件を2〜3件
技術面接では、選んだ技術の理由と、うまくいかなかった判断の振り返りを用意します。成果だけでなく、迷った点と、結果の確かめ方を話せる人は、再現性があると読まれやすくなります。
逆質問も、準備の対象です。開発体制、評価、AIツールの運用など、準備②の4点から質問を選びます。
面接の日程は、並行する企業のピークを同じ週にそろえます。在職中は、平日の時間を確保しにくいため、オンライン面接の可否と、夕方以降の枠があるかを早めに聞いておきます。
つまずきやすいのは、次の3つです。
- 経歴を時系列で読み上げ、聞かれた点に答えていない
- 志望動機が、他の企業にも当てはまる内容になっている
- 面接の結果を待たずに他社の期限が来て、判断を急ぐ
内定:承諾する前に、労働条件を書面で確かめる
内定が出たら、承諾か辞退かを決めます。dodaは、検討の期間を1週間程度と見ています。
回答期限の延長の打診は、内定取り消しにつながる可能性があるとして、勧められていません。他社の結果を待ちたい場合は、選考の進み具合を早い段階で各社に伝え、結果が出る時期を近づけます。
承諾の前に、労働条件を書面で確かめます。労働基準法は、労働契約を結ぶときに、使用者が労働条件を明示することを求めています。
厚生労働省は、書面の交付が必要な事項として、契約期間、就業の場所と従事すべき業務、始業・終業の時刻や休日など、賃金の決定・計算・支払の方法、退職に関する事項を挙げています。労働者が希望すれば、電子メールなどでの明示も認められています。
募集のときに聞いた内容と見比べて、次の4つを確認します。
- 就業場所と業務の範囲(リモートの扱い、配属の変更の可能性)
- 労働時間、休日、残業の扱い
- 賃金の内訳と計算方法(固定残業代の有無を含む)
- 退職に関する事項
違いがあれば、承諾の前に質問します。書面の条件と話が食い違うまま承諾すると、入社後に直す手段が限られるためです。
退職・入社:2週間と1か月のあいだで、日程を決める
内定を承諾したら、現職への退職の申し出と、引き継ぎに進みます。dodaは、引き継ぎ・退職・入社の準備に4〜5週を見ています。
退職の申し出は、順序が大切です。労働条件を書面で確かめて承諾したあとに、上司へ伝えます。
法律上の扱いは、茨城労働局のQ&Aが整理しています。期間の定めのない労働契約では、民法627条により、退職の申し入れから2週間で退職の効力が生じます。
就業規則に「1か月前までに申し出る」などの定めがある場合は、規則を優先する見解と、民法を優先する裁判例があります。後任が見つかるまで退職を認めないことは、できないとされています。
実際には、引き継ぎに必要な期間を踏まえて決めます。dodaは、一般的には退職の約1か月前に上司に伝える目安とし、後任が決まらないことを理由に入社日を後ろにずらすと、内定取り消しにつながるおそれがあると述べています。
そのため、入社日は、現職の就業規則と引き継ぎの量から必要な期間を見積もってから、企業に伝えます。
エンジニアの引き継ぎでは、次の4つを書類にして残します。
- 担当システムの一覧と、運用手順
- 設計の経緯が分かるドキュメント(なぜその構成にしたか)
- アクセス権限と、鍵・アカウントの管理者
- 未完了のタスクと、連絡が必要な関係者
有給休暇が残っている場合は、引き継ぎの計画に組み込んで、上司と調整します。
期間が延びる4つのパターンと、14週のモデル
転職が長引くのは、次の4つが重なったときです。
- 条件が多く、応募できる求人が少ない
- 書類を1種類のまま使い回し、書類選考で止まる
- 面接の日程が取れず、選考が遅れて内定のタイミングが合わない
- 退職日が決まらず、入社日が動く
dodaの目安を週に直して並べると、14週ほどのモデルになります。
| 週 | やること |
|---|---|
| 1〜2週 | 棚卸し、転職理由と条件の整理、エージェントの面談や求人探し |
| 3〜4週 | 職務経歴書を完成させ、複数社に応募 |
| 5〜9週 | 面接。並行する企業の日程をそろえる |
| 10週 | 内定。労働条件を書面で確認し、承諾か辞退かを決める |
| 11〜14週 | 退職の申し出、引き継ぎ、入社準備。入社は15週目 |
短くしたいときは、準備の段階を削らず、書類の初版を早く作って応募を始めます。準備に時間をかけすぎるより、応募して企業の反応を見るほうが、条件や書類の直しどころが分かります。



