未経験から最初にやることは、勉強を始めることではなく、目指す職種を仮に決めることです。職種が決まると、学ぶ言語、作るもの、応募する求人が一本の線になります。
この記事は、最初の3か月で何をどの順でやるかの手順です。入口の職種そのものの比較は、未経験からエンジニアはAI時代でも目指せる?入口の職種を比較にまとめています。
最初の1週間は、学ばずに目指す職種を仮決めする
未経験の人が最初につまずくのは、教材選びです。教材は、職種が決まってから選ぶほうが遠回りになりません。
職種を先に決める理由は、同じ「エンジニア」でも、学ぶ内容が違うからです。
- Webサービス開発:HTML/CSS、JavaScriptやPython、データベース
- 業務システムの開発:Javaなど、企業の基幹で使われる言語
- 運用・サポート:OSやネットワークの基礎、問い合わせ対応
- テスト・QA:ソフトウェアの動きを確かめて、不具合を整理する力
どれを選んでも、仮決めで十分です。3か月学ぶ中で、向き不向きが分かって変えることはよくあります。
仮決めの手順は、求人票を5件読むだけです。気になる職種の求人を並べて、「歓迎するスキル」に共通して出てくる言葉を書き出します。
求人票の読み方はエンジニア求人票の見方に書きました。選べないときは、前職の経験に近いほうから選びます。
学ぶ順番:HTML/CSS、1つの言語、Git、作り切る
仮決めができたら、学ぶ順番は4段階です。Webサービス開発を例にしますが、ほかの職種でも「小さく作り切る」までの流れは同じです。
| 段階 | 目安の期間 | やること | 終わりの目印 |
|---|---|---|---|
| 1 | 1〜3週目 | HTML/CSSで、自分の紹介ページを作る | ブラウザで開いて、見た目を自分で直せる |
| 2 | 4〜7週目 | 1つの言語で、条件分岐と繰り返しを書く | 小さな計算や、リストの並べ替えが書ける |
| 3 | 8週目 | Gitで変更を記録し、GitHubに置く | 自分の手でコミットとプッシュができる |
| 4 | 9〜12週目 | 小さなアプリを1つ、公開まで作り切る | 他人がURLから触れる |
HTML/CSSを最初に置くのは、書いた結果がすぐ画面に出て、続けやすいからです。運用やテスト・QAを目指す場合も、Webの仕組みを知っておくと求人票の言葉が読めるようになります。
言語は、複数を同時に始めません。2つ目の言語は、最初の1つで作り切ったあとで十分間に合います。
Gitは、最初の数週間は使わなくても動きますが、応募の時点で使えていないと、作ったものを見せる場所がなくなります。8週目に置いたのは、作り切りの段階に入る前に、記録の習慣をつけるためです。
AIコーディングツールは、頼る範囲を先に決める
AIコーディングツールは、未経験の学習でも使えます。ただし、使い方を間違えると、動くものは作れても、自分で説明できないものが増えていきます。
編集部では、頼る範囲を次のように分けて考えています。
| 場面 | 使い方 | 線引き |
|---|---|---|
| エラーの意味が分からない | 画面のエラー文を貼って、意味を聞く | 答えを読んだら、自分の言葉で言い直す |
| コードの書き方が分からない | 書き方の例を出してもらう | 出た例を、自分で打ち直して動かす |
| 作りたいものの全体を作らせる | 学習の4段階が終わってから使う | 作った後に、1行ずつ説明できるか確かめる |
線引きの基準は、「AIの出力を、AIなしで説明できるか」です。説明できない部分は、学習の穴として残っています。
運営会社の採用支援の現場では、AIで作った成果物そのものより、その後の質問への答えで差がつく場面を見ています。「ここは何をしているコードですか」と聞かれて、止まってしまう人は多くいます。
AIを使った学習の順番は、プログラミングを学ぶ意味はAI時代にもあるか?学ぶ順番を5段階ででも扱っています。AIで作ったものの見せ方は、バイブコーディングは就職・仕事になる?採用側の見方と見せ方が参考になります。
学習時間の現実的な見積もり
学習時間に、公的な決まった目安はありません。ここでは、編集部が置いた計画の例を示します。
| 週の学習時間 | 3か月(約13週)の累計 | 3か月で届く場所 | |
|---|---|---|---|
| 平日30分+休日に各2時間 | 約6時間 | 約80時間 | HTML/CSSと言語の基礎まで |
| 平日1時間+休日に各2.5時間 | 約10時間 | 約130時間 | 小さなアプリ1つ |
| 平日2時間+休日に各4時間 | 約18時間 | 約230時間 | アプリ1つと、作り直し |
この時間数は、応募できる水準を保証するものではありません。採用側は時間数を見ておらず、見るのは作ったものの中身です。
働きながら学ぶ場合は、時間を作るより、毎日同じ時間に少し触れるほうが続きます。1日30分でも、続けたログが残れば、面接で話せる材料になります。
学習ログは、日付と、やったこと1行、詰まったことを残すだけで足ります。あとで職務経歴書や面接の材料に変わります。
資格については、IPAの試験区分の一覧で、ITパスポート試験は「ITを活用する全ての社会人」が対象の共通的な知識の試験、基本情報技術者試験は情報処理技術者を目指す人が対象の基本的な知識・技能の試験とされています。学習の道しるべとして使えますが、最初の3か月の必須の手順には入れていません。
無料の教材と、公的な支援
教材は、無料のものだけでも最初の3か月は進められます。選ぶときは、次の3点で決めます。
- 手を動かして、結果が画面に出るもの
- 公式のドキュメントや、運営元がはっきりしているもの
- 1つ終えると、作ったものが手元に残るもの
教材は増やさず、1つを終わらせます。教材を渡り歩くほど、作り切った経験は残りません。
費用を支える公的な制度は、厚生労働省が案内しています。ハローワークインターネットサービスの教育訓練給付金は、受講費用の一部が支給される制度で、種類と給付率は次のとおりです。
| 種類 | 基本の給付率 | 上限額 |
|---|---|---|
| 専門実践教育訓練 | 経費の50%(条件を満たすと70%、80%) | 年40万円(追加後は年56万円、年64万円) |
| 特定一般教育訓練 | 経費の40%(資格取得・就職で50%) | 20万円(追加後は25万円) |
| 一般教育訓練 | 経費の20% | 10万円 |
対象は、厚生労働大臣が指定した講座を修了した人です。受講開始日に雇用保険の加入期間が3年以上ある在職者、または離職後1年以内の人が対象で、初めて受ける場合は、専門実践は2年以上、特定一般・一般は1年以上に緩和されます。
指定講座かどうかは、申し込む前に教育訓練講座検索システムで調べます。専門実践と特定一般では、受講開始日の2週間前までに、ハローワークで訓練前キャリアコンサルティングと手続きが必要です。
もう一つは、ハロートレーニングです。公共職業訓練(離職者訓練)は、主に雇用保険を受給している求職者が対象で、訓練期間は概ね3か月〜2年、受講料は無料(テキスト代などは自己負担)です。
求職者支援訓練は、主に雇用保険を受給できない求職者が対象で、受講料は無料です。都道府県の例に「情報処理科」などの訓練があり、地域ごとに開講している内容は違います。
スクールを使う場合は、費用と就職支援の中身を比べます。プログラミングスクール6校を比較で、選ぶ基準を整理しています。独学か、スクールか、公的な訓練かは、学習時間の確保と費用の両方で決めるものです。
採用側の視点:未経験の応募で、企業は何を見ているか
ここからは、採用する側の見方です。運営会社の採用支援の現場では、未経験者の応募書類を読むときの見方が、ある程度そろっています。
採用担当者は、書類の段階で次の4点を探しています。
- 目指す職種と、その理由が合っているか
- 学習が続いている証拠があるか(期間、ログ、公開したもの)
- 作ったものが、URLやリポジトリで見られるか
- 自分で説明できる範囲が、作ったものの範囲と合っているか
学んだ時間より、作ったものと説明の中身を見るのが、未経験の書類選考の基本です。資格や修了証は参考になりますが、それだけで通るわけではありません。
面接では、書類の内容を掘り下げる質問が出ます。作ったアプリについて、「なぜその作りにしたのか」「詰まったときはどう調べたか」「次に直すならどこか」と聞かれます。
この質問に、AIの出力をそのまま答えると、深く聞かれて止まります。逆に、小さくても自分で決めた判断が1つあるアプリは、話が続きます。
採用側が避けたいのは、スキルの見極めが難しいまま採用して、育成の手間がかかる状況です。だから、見極めの材料が書類に揃っている応募は、読みやすくなります。
面接で聞かれる内容は、エンジニアの面接でよく聞かれる質問と答え方で確認できます。志望動機の書き方は、未経験エンジニアの志望動機の書き方にあります。
作ったものを、応募で見せる形にする
最初の作品は、大きくなくて構いません。公開されていて、1分で何のアプリか分かることのほうが大事です。
見せる形は、次の4点が揃うと読まれやすくなります。
- 公開したURL(他人が触れる)
- GitHubのリポジトリ(コミットの履歴が見える)
- READMEに、何を作ったか、なぜ作ったか、工夫した点を書く
- 詰まったことと、どう解決したかの記録
READMEには、AIを使った箇所と、自分で決めた箇所を書き分けておくと、面接の質問に答えやすくなります。書き方は、AIで作ったポートフォリオは評価される?分かれ目と書き方に詳しくまとめています。
題材は、前職や身の回りの困りごとから選ぶと、説明が自然になります。たとえば、前職の予約管理、在庫の記録、シフト表などです。
前職の経験と作ったものがつながると、志望動機とも一貫します。「なぜそれを作ったか」が前職で説明できると、書類が1本の話として読めます。
いつ応募を始めるか
応募を始める時期は、学習が終わったときではなく、公開した作品が1つできたときです。完璧に学んでから応募しようとすると、応募はいつまでも始まりません。
目安の条件は、次の4つです。
- 公開した作品が1つあり、READMEがある
- Gitでの記録が、数週間分残っている
- 作品について、5分間、質問に答えられる
- 志望動機が、前職の経験とつながっている
この4つが揃ったら、学習を続けながら応募を始めます。応募を始めたあとも、書類で落ちた理由や面接で聞かれたことが、次の学習の材料になります。
応募先の探し方は、直接応募のほかに、転職エージェントもあります。IT特化の転職エージェントの比較で、選び方の基準と各サービスの特徴を並べています。
書類の組み立ては、エンジニアの職務経歴書の書き方にまとめました。エージェントの使い方は、転職エージェントの使い方も参考になります。
最初の3か月のやること
読み終えたあと、次の順で進めてみてください。
- 1週目:求人票を5件読み、目指す職種を仮に決める
- 1〜3週目:HTML/CSSで、自分の紹介ページを作る
- 4〜7週目:1つの言語を学び、AIには「意味を聞く」使い方を守る
- 8週目:GitHubに、作ったものを置く
- 9〜12週目:小さなアプリを1つ公開し、READMEを書いて応募を始める
最初の3か月で目指すのは、うまくなることではなく、小さな作品を1つ公開することです。公開できると、学習の成果が、応募で見せられる材料に変わります。



