学ぶ意味はあります。ただし、学ぶ目的が変わりました。
AIが出すコードを「ほぼ合っているが完全ではない」と感じる開発者が多く、それを読んで判断し、直せる人でないと使いこなせないからです。
学ぶ順番は、読む、直す、AIと作る、確かめる、公開して運用を見る、の5段階を勧めます。
AIを使うことは、もう前提になっている
Stack Overflowの2025年の開発者調査では、「開発でAIツールを使っている、または使う予定」と答えた人が84%でした(この設問の回答は33,662件)。Google CloudのDORAが2025年9月に発表した報告書(約5,000人の技術職への調査)では、仕事でAIを使う人は90%でした。
対象も聞き方も違うので数字は並べて比べられませんが、どちらも「使わない」が少数派だと示しています。
同じ調査は、出力をそのまま信じられない現状も示しています。Stack Overflowでは、AIの正確さを疑う人が46%で、信頼する人の33%を上回りました。
最大の不満は「ほぼ合っているが、完全ではない解決策」の66%で、「AIが生成したコードのデバッグに時間がかかる」が45.2%でした(不満の設問は31,476件の回答・複数回答)。DORAでも、生成されたコードをほとんど、またはまったく信頼しない人が30%います。
AIの答えを信頼できないとき、人に聞くと答えた人は75.3%でした。
書く作業をAIに任せる人が増えるほど、仕事の中心は「判断する」ことに移ります。
「作れた」と「身についた」は別だった
AIを使うと、作る作業は進みます。しかし、身についたかどうかは別でした。
Anthropicは2026年1月29日に、ランダム化比較試験の結果を公開しました。参加者は、Pythonを1年以上週1回以上使っている、主に若手のソフトウェアエンジニア52人です。
全員が初めて使うライブラリ(Trio)で2つの機能を作り、その後にクイズを受けました。平均点は、AIを使った群が50%、使わなかった群が67%でした。
差が最大だったのはデバッグの問題です。作業時間は、AI群が約2分速かったものの、統計的に有意な差ではありませんでした。
この研究は、AIの使い方によって成績が分かれたことも報告しています。クイズの平均が40%を下回ったのは、コードの作成を全部任せた人(4人)、質問から始めて途中から全部任せた人(4人)、エラーの対応や確認をAIに任せ続けた人(4人)です。
65%以上だったのは、コードを生成した後に理解のための質問をした人(2人)、コードと説明を一緒に求めた人(3人)、概念だけを質問してエラーは自分で解決した人(7人)でした。
研究者自身が、サンプルが小さいこと、測ったのは作業直後の理解であること、使い方と成績の因果は示せていないこと、実験がチャット形式のAIで、エージェント型の道具では影響がより大きい可能性があることを書いています。
次は教育の実験です。研究者らが、トルコの高校の数学の授業でほぼ1,000人を対象に、ChatGPTに近いAI(GPT Base)、ヒントを出すよう設計したAI(GPT Tutor)、AIなしの3群を比べました。
練習中の成績は、GPT Baseの群が対照群より48%、GPT Tutorの群が127%高くなりました。ところがAIなしの試験では、GPT Baseの群は対照群より17%低く、GPT Tutorの群は対照群とほぼ同じでした(紹介記事は2024年8月27日付)。
プログラミングではなく数学の実験ですが、「練習中の出来」と「AIなしで残った力」が別だと示しています。
最後に、METRが2025年7月に公開した実験です。経験豊富なオープンソース開発者16人が、実際の課題246件を、AIの使用を許可する場合と禁止する場合にランダムに割り当てて行いました。
AIを使うと所要時間は19%長くなりました。ところが開発者は、事前に24%速くなると予想し、終わった後も20%速くなったと感じていました。
対象は熟練者で、2025年前半の少人数の実験です。METR自身も、2025年前半のAIの、ある1つの状況での記録だと述べ、より新しいデータによる2026年2月の更新を案内しています。
「速く進んでいる感覚」は、実際の進み具合や理解の深さの証拠にならないことを示しています。
ここまでの実験から読み取れるのは、AIを使うこと自体が問題なのではなく、考える工程を丸ごと渡すと、理解が残りにくいということです。
企業の現場で見えているつまずき方
ジョブサポートは2026年3月16〜17日に、直近2年以内に新卒・若手(入社1〜3年目)エンジニアのOJTを担当した1,004人へインターネット調査をしました(2026年4月22日発表)。
生成AIを積極的に、または必要に応じて使っている新人を担当する904人に、AIで作ったコードの課題を聞くと、最も多かったのが「出力されたコードの仕組みや根拠を本人が理解していない」の61.4%でした。次いで「要件を読み解けず、曖昧な指示を出している」が47.5%、「エラーの原因を自力で特定・修正できない」が36.6%です。
エラーが出たときの反応では、「エラー文を自分で読まず、やみくもにAIへ再質問を繰り返す」が46.5%で最多でした。
編集部は、選考でも同じ点が見られやすいと考えます。「AIを使って作りました」より、「AIの出力のどこを疑い、何を確かめ、どう直したか」を説明できるかどうかです。
学ぶ順番を5段階で示すと
段階1:読む
小さなコードを読み、何をしているかを自分の言葉で説明します。変数、条件分岐、繰り返し、関数、リストと辞書が対象です。
コード自体はAIに書かせてかまいません。1行ずつ「何が出力されるか」を予想してから実行し、予想と結果を比べます。
目安は、10〜30行のコードを、実行する前に出力まで予想できることです。
段階2:直す
わざとコードを壊し、エラー文を読み、原因を絞ります。AIに聞く前に、エラー文を自分で読み、仮説を1行だけ書きます。
Anthropicの実験で差が最大だったのはデバッグで、成績が高かった型には「エラーは自分で解決する」が含まれていました。ジョブサポートの調査でも、エラー文を読まずに再質問を繰り返す新人が最多でした。
目安は、エラーが出たとき「どこで、何が、なぜ」を言えることです。
段階3:AIと作る
小さなアプリをAIと作ります。ここで、進め方に型を持ちます。
- 頼む前に、「何をするコードか」を自分で1〜2行書く
- コードと一緒に、説明も求める
- 理解できない行を、そのまま残さない
実験で成績が高かった「生成の後に理解の質問をする」「コードと説明を一緒に求める」を、日常の手順にしたものです。
目安は、AIが書いたコードを、他の人に説明できることです。
段階4:確かめる
AIの出力は「ほぼ合っている」ので、確かめる項目を自分で持ちます。たとえば、取得したデータの件数が総数と一致するか、別のユーザーで見たときに見えてはいけないものが見えないか、空の入力や0や巨大な入力で壊れないか、日付や時差が環境によってずれないか、です。
運営会社が実際に起こした事故は、AIと本番を作って起きた事故の記事にまとめています。
目安は、「動いた」の後に、確かめた項目を3つ書けることです。
段階5:公開して運用を見る
小さく公開し、エラーとアクセスを見ます。手元では起きず、本番でだけ起きること(遅さ、時刻のずれ、権限の違い)は、公開しないと体験できません。
目安は、公開したものを1つ持ち、見つけた問題を1つ直した記録があることです。
学生と未経験の人が気をつけること
学生の場合、授業の課題でAIを使える場面があるかもしれません。上の高校数学の実験は、練習中にAIがあると出来が上がる一方、AIなしの試験で差が出る可能性を示しました。
AIなしで問われる場面は、授業の試験や、面接で自分のコードを口頭で説明するときです。課題はまず自力で書いてから、AIに添削や別解を聞くほうが、あとで使える力が残ると考えます。
未経験の人が学習サービスを選ぶときは、「AIなしで読む・直す」工程がカリキュラムにあるかを見てください。AIに書かせて完成させる内容だけだと、段階1と2を飛ばすことになります。
ここまでの研究から言えるのは、AIの使い方で、残る力が変わりうることです。
今日からできること
次の3つを、1つずつ試してください。
- 手元にあるコードを1つ選び、何をしているかを自分の言葉でメモします。AIに書かせたコードでかまいません
- 次にエラーが出たら、AIに聞く前に、エラー文の「どこで、何が」を1行で書きます
- 作ったものに「確かめたこと」を3つ、READMEに書きます
学んだ記録は、そのまま次の応募で説明できる材料になります。



