エンジニアの転職理由は、不満を事実に直し、次にやりたいことで締めると伝わります。不満があること自体は、評価を下げる理由になりません。
評価が分かれるのは、不満の言い方と、その先に何があるかです。ここでは、転職理由の組み立て方、ネガティブな理由の言い換え、書類と面接での違い、短期離職の扱いを順に整理します。
転職理由は「不満の説明」ではなく「次に求めることの説明」
転職理由の本音は、処遇や働き方への不満であることが多くなります。dodaが2025年8月に、20〜59歳の正社員978人へ行った調査(2024年7月〜2025年6月に転職した人が対象、複数回答)では、1位が「給与が低い・昇給が見込めない」で36.6%でした。
2位は「労働時間に不満(残業が多い・休日出勤がある)」で26.3%、3位は「個人の成果で評価されない」で22.8%です。不満から転職を考えるのは、ごく普通のことです。
だからといって、不満をそのまま並べると、聞き手には「どこに行っても同じ不満が出るのでは」と映ります。
同じdodaのページは、前職の嫌だった点としてではなく、「理想とするキャリアプランや働く目的を実現するために最適ではなかったこと」として捉えるよう勧めています。
つまり、転職理由は過去の説明ではなく、次の環境に求めることを示す材料です。
転職理由を組み立てる3段の型
組み立ては、次の3段です。
- 事実:何が起きたかを、数字や制度で書きます。感想や評価の言葉は入れません
- 試したこと:現職の中で変えようとしたことと、その結果を書きます
- 次に求めること:次の環境で何をしたいかで締めます
「試したこと」を入れる理由は、環境のせいにして終わっていないことを示せるからです。変えられなかった事実が伝われば、辞める判断にも納得感が出ます。
「次に求めること」は、応募先で実現できることを選びます。実現できないことを書くと、志望動機とのつながりが切れます。
理由別の言い換え例:残業・評価・技術的負債・人間関係・SES
よくある5つの理由を、NG例と改善例で並べます。
| 理由 | NG例 | 改善例 |
|---|---|---|
| 残業 | 毎日残業で、体がもたなかった | 月の残業が常時40時間を超えていた。手作業のデプロイを自動化して減らしたが、人員の制約で限界があった。工数を見積もって計画的に進められる開発体制で働きたい |
| 評価 | 頑張っても評価されなかった | 等級が勤続年数で上がる仕組みで、設計を任されても変わらなかった。担う役割の大きさで評価が決まる環境で、設計から運用まで責任を持ちたい |
| 技術的負債 | 古いコードばかりで成長できなかった | 十数年前の構成を保守する業務が中心で、改善の時間が取れなかった。リファクタリングや計測を開発の一部として進められる環境で働きたい |
| 人間関係 | 上司と合わなかった | レビューや情報共有が個人間で閉じており、判断の背景が残らなかった。チームで設計の理由を共有する進め方の環境で働きたい |
| SES | 客先常駐で、希望の案件に入れなかった | 参画先の選択に自分の意向を反映しにくかった。自社サービスで、リリース後の改善まで継続して関わりたい |
改善例に共通するのは、事実が仕組みや状況の話になっていて、最後が次にやりたいことで終わっている点です。
特に人間関係は、個人への不満として話すと、同じ理由で辞めると受け取られやすくなります。特定の人を悪く言わず、進め方の事実に直して話します。
SESから自社開発への転職は、SESから自社開発へ転職するにはに別にまとめています。
採用担当者は、転職理由で何を確かめているか
運営会社の採用支援の現場では、採用担当者は転職理由を、辞めた理由の説明としてより、入社後の再現性の確認として聞いています。
確かめていることは、主に次の3つです。
- 同じ理由で、うちでも辞めないか:現職の不満が、応募先にもあるものかを見ます
- 志望動機とつながっているか:転職理由で求めたことが、応募先の仕事で実現できるかを見ます
- 環境のせいだけにしていないか:自分で試したことがあるかを見ます
たとえば残業が理由の人に、応募先も繁忙期に残業がある場合、採用担当者は「同じ不満が出ないか」を気にします。
そのため、応募先の実情を調べたうえで、許容できる範囲と求めることを自分の言葉で話せると、懸念が減ります。
また、転職理由と志望動機の軸がずれていると、どちらも準備した文章に聞こえます。転職理由で「リリース後の改善に関われなかった」と話した人が、志望動機で「幅広い技術に触れたい」と話すと、話が1本につながりません。
志望動機側の見られ方は、エンジニアの面接でよく聞かれる質問で面接全体の中の位置づけとあわせて整理しています。
書類と面接で、書き方と話し方は変わる
書類は、読み手が短時間で流し読みします。面接は、聞き手が追加で質問できます。同じ内容でも、書き方と話し方は変わります。
| 場面 | 向いた形 | 注意点 |
|---|---|---|
| 職務経歴書・応募書類 | 2〜3行で、事実と次に求めることだけを書く | 経緯や感情は書かない。読み手が疑問を持つ長さにしない |
| 面接 | 結論、事実、試したこと、次に求めることの順に話す | 1分程度でまとめ、追加の質問に備えて具体例を用意する |
書類では、転職理由を独立した欄に長く書くより、職務経歴や自己PRの流れの中で、次にやりたいことにつなげるほうが読みやすくなります。書類全体の書き方は、エンジニアの職務経歴書の書き方にまとめています。
面接では、書類に書いた内容を話し言葉で補います。書類より少しだけ具体的に話せると、本人の経験だと伝わります。
面接で追加の質問が出る場所は、次の3つです。
- 試したことの中身:具体的に何をして、どうなったかです
- 次の環境の根拠:その会社を選んだ理由は何かです
- 譲れない条件:何が実現できないと、また辞める可能性があるかです
譲れない条件は、聞かれる前に整理しておくと、答えがぶれません。
短期離職のときの転職理由
在籍が短い場合は、理由の説明が特に見られます。マイナビ キャリアリサーチLabが2024年7月に、2024年1〜7月に中途採用の募集を担当した人事担当者1,600人へ行った調査では、早期離職者にマイナスの印象を持つ人が70.1%でした。
マイナスの印象が多数派だからこそ、理由の説明で補う必要があります。組み立ては、次の順です。
- 何を確かめたか:入社前に聞いていた内容と、実際の業務の違いを事実で書きます
- 何が合わなかったか:自分の希望と、実際の環境の違いを書きます
- 次は何を軸に選んだか:同じことが起きないよう、確認した点を書きます
話してはいけないのは、会社への不満だけで終わることと、入社前の確認不足を隠すことです。自分の確認不足があったなら、そこを認めたうえで、次はどう確かめたかまで話すと、再現性への懸念が減ります。
職歴は、短くても省略せずに書きます。年数ごとの見られ方は、エンジニアの転職は何年目が見られるかにまとめています。
転職理由が複数あるときは、1つに絞る
転職理由が複数あるときは、すべてを並べず、応募先で最も実現したいことにつながる1つを軸にします。
残業も評価も技術的負債も不満だった場合、3つを並べると、不満の一覧に聞こえます。軸を1つ決めて、残りは聞かれたときに補足として話します。
軸の選び方は、次の2つの問いで考えます。
- 応募先で、その不満は解消されるか:解消されない理由なら、軸にしません
- 志望動機と、同じ言葉でつながるか:転職理由と志望動機を、1文でつなげられるかを確かめます
たとえば、軸を「リリース後の改善まで関わりたい」に決めた人は、評価制度への不満を、その軸の補足として話せます。評価が「作って終わり」で決まる仕組みだった、という形です。
軸が決まると、書類の2〜3行も、面接の1分も、同じ筋で作れます。
転職理由を整理するときに、エージェントを使う場合
転職理由は、一人で考えると、不満に偏りやすくなります。第三者に話すと、事実と感想を分けやすくなります。
転職エージェントに相談すると、応募先ごとに企業が気にする点を聞けることがあります。IT特化のサービスは、IT特化の転職エージェントの比較のように、対象や特徴で選び方を整理しておくと、自分に合うものを選びやすくなります。
使い方で気をつけたいのは、エージェントが整えた転職理由を、そのまま自分の言葉にしないことです。面接で追加の質問に答えるのは本人なので、納得して話せる形に直します。
転職の失敗パターンは、エンジニア転職の失敗と後悔で整理しています。辞める前の手順は、エンジニアの退職の進め方にまとめています。
今日からできること
転職理由は、次の4つの作業で形になります。
- 不満を紙に書き出し、事実と感想に分けます
- 事実について、現職で試したことと結果を1行ずつ書きます
- 応募先の仕事で実現できる「次にやりたいこと」を1つ選びます
- 3段の型で、書類用の2〜3行と、面接用の1分を作ります
作ったあとに、友人や家族に読んでもらい、不満だけの話になっていないか確かめると、自分では気づかない偏りが見えます。転職理由は、一度作って終わりではなく、応募先ごとに「次に求めること」を調整して使います。



