エンジニアの年収相場は、情報通信業の公的統計で、30〜34歳が約436万円、40〜44歳が約548万円(所定内給与の年額換算、賞与を除く)です。職種別では、dodaの集計でSE/プログラマの30代が495万円、プロジェクトマネジャーの30代が705万円と、職種で差があります。
数字は、調べた相手と計算方法で変わります。どの数字が何を表すかを分けて、年代別に整理します。
年収の相場は何を見て決めるか:4つの数字の違い
年収の統計は、同じ「エンジニアの年収」でも、調べ方で数字が違います。比べる前に、4つの種類を分けます。
| 数字の種類 | 例 | 賞与 | 残業代 |
|---|---|---|---|
| 所定内給与(月額) | 厚生労働省 賃金構造基本統計調査 | 含まない | 含まない |
| 職業別の年収 | job tagの職業ページ | 載っているのは「賃金(年収)」の欄の数字。算出方法は明記なし | 明記なし |
| 民間の平均年収 | dodaの職種別平均年収 | 支給額で算出(手取りではない) | 明記なし |
| 現在の年収の回答 | レバテックのIT人材調査 | 額面上の年収を本人が回答 | 本人の回答による |
公的統計の「賃金」は、基本給や各種手当の月額で、残業代と賞与が入っていません。厚生労働省の用語の定義では、賃金は6月分の所定内給与額の平均で、時間外・深夜・休日の手当などの超過労働給与を差し引いた額です。
年収の目安にするときは、所定内給与×12+年間賞与で計算します。下の年代別の表は、賞与を含まない所定内給与×12の数字です。賞与がある人の実際の年収は、表の額より高くなります。
dodaやjob tagの数字には、年収として別の定義の数字が載っています。表を見るときは、まず賞与と残業代が入っているかを確認します。
公的統計で見る年代別の相場:情報通信業の年齢別賃金
厚生労働省の賃金構造基本統計調査(令和7年)は、国が毎年行う賃金の調査です。調査の対象は、日本全国の79,321事業所で、有効回答は59,836事業所(回答率75.4%)でした。
概況の集計は、そのうち10人以上の常用労働者を雇う民営事業所52,242事業所です。賃金は2025年6月分の所定内給与額で、賞与は2024年1月から12月の1年間の額を調べています。
この調査には、情報通信業の年齢階級別の賃金があります。情報通信業は、ソフトウェア開発やインターネット関連など、ITの仕事をする人が多い産業ですが、職種はエンジニアに限りません。営業や事務の人も入った平均です。
月額に12をかけた年額を、表にします(男女計、賞与を除く)。
| 年齢 | 所定内給与(月額) | 12倍した年額の目安 |
|---|---|---|
| 20〜24歳 | 26.2万円 | 約315万円 |
| 25〜29歳 | 30.9万円 | 約370万円 |
| 30〜34歳 | 36.3万円 | 約436万円 |
| 35〜39歳 | 41.0万円 | 約492万円 |
| 40〜44歳 | 45.7万円 | 約548万円 |
| 45〜49歳 | 49.2万円 | 約590万円 |
| 50〜54歳 | 49.1万円 | 約590万円 |
| 55〜59歳 | 51.6万円 | 約620万円 |
月額の数字は、千円単位の公表値(262.2、308.7、363.4、410.1、456.8、491.7、491.3、516.3)を、万円に直しています。年額は、その12倍を万円単位で丸めた値です。
情報通信業全体(年齢計)の所定内給与は40.6万円(年額で約487万円)、全産業は34.06万円(同約409万円)です。情報通信業の平均年齢は40.2歳、勤続年数は12.3年でした。
20代後半から40代前半までは、5歳ごとに月額が4〜6万円ほど上がり、45歳以降は伸びがゆるやかになります。50代前半は、45〜49歳とほぼ同じ水準でした。
この表から言えることは、情報通信業全体では、年齢とともに賃金が上がる形になっているという点です。エンジニアの職種に絞った相場ではない点は、押さえておきます。
職種別の相場:job tagとdodaの数字
職種を絞った数字は、厚生労働省の職業情報提供サイト(job tag)と、民間のdodaにあります。
job tagのシステムエンジニア(受託開発)のページには、全国の年収578.5万円、平均年齢37.1歳、労働時間159時間と載っています。出典は、令和7年賃金構造基本統計調査を加工した数字です。
同じページには、スキルレベル別の年収の範囲(第一四分位から第三四分位)もあります。厚生労働省の2023年度の委託調査をもとにした数字です。
| スキルレベル | 設計・構築 | ソフトウェア開発スペシャリスト |
|---|---|---|
| レベル1〜2 | 420〜620万円 | 435〜600万円 |
| レベル3 | 450〜700万円 | 450〜695万円 |
| レベル4 | 500〜780万円 | 500〜750万円 |
| レベル5以上 | 600〜950万円 | 550〜866万円 |
第一四分位から第三四分位は、集団の真ん中の半分が入る範囲です。上下の極端な額を除いた範囲なので、自分の位置を見るのに使えます。
同じ職種でも、スキルレベルが上がると範囲が上へ動き、幅も広がります。レベル5以上の設計・構築では、範囲の下端が600万円、上端が950万円です。
民間のdodaは、職種別と年代別の平均年収を出しています。2024年9月から2025年8月末にdodaに登録した、20〜65歳の正社員の有効回答約60万件の集計です。
| 職種 | 全体 | 20代 | 30代 | 40代 | 50代〜 |
|---|---|---|---|---|---|
| プロジェクトマネジャー | 707万円 | 517万円 | 705万円 | 855万円 | 867万円 |
| ITコンサルタント | 601万円 | 496万円 | 649万円 | 916万円 | 928万円 |
| システム開発/運用 | 489万円 | 404万円 | 516万円 | 628万円 | 662万円 |
| サーバーエンジニア | 469万円 | 411万円 | 520万円 | 664万円 | 653万円 |
| ネットワークエンジニア | 455万円 | 396万円 | 519万円 | 658万円 | 756万円 |
| Webサービスエンジニア | 452万円 | 397万円 | 515万円 | 638万円 | 661万円 |
| SE/プログラマ | 435万円 | 394万円 | 495万円 | 576万円 | 593万円 |
| 運用/監視/保守 | 389万円 | 350万円 | 441万円 | 552万円 | 630万円 |
| ヘルプデスク | 362万円 | 327万円 | 375万円 | 448万円 | 499万円 |
20代では、職種間の差が小さく、394万円から517万円の範囲に入っています(この表の範囲で)。40代になると、運用/監視/保守の552万円とITコンサルタントの916万円で、差が大きくなります。
この差は、40代で任される役割が分かれていくことと関係すると考えられます。dodaの数字は、登録者の平均で、公的統計とは集め方が違います。
年収の分布を見る:平均より、自分の位置を確かめる
平均だけを見ると、自分の位置が分かりません。分布で見ます。
レバテックが2025年11月に行った調査(20〜59歳のIT人材3,000人、インターネット調査)では、現在の年収(額面)は次のとおりでした。
| 年収 | 割合 |
|---|---|
| 300万円未満 | 9.4% |
| 300万円〜400万円未満 | 14.8% |
| 400万円〜500万円未満 | 17.0% |
| 500万円〜600万円未満 | 18.9% |
| 600万円〜700万円未満 | 13.6% |
| 700万円〜800万円未満 | 8.9% |
| 800万円〜900万円未満 | 6.0% |
| 900万円〜1,000万円未満 | 3.6% |
| 1,000万円以上 | 7.9% |
最も多いのは500万円〜600万円未満の18.9%です。500万円未満が41.2%、600万円以上が40.0%で、ほぼ半分ずつに分かれます。
1,000万円以上は7.9%です。ここに入る人は少数なので、平均値は、この少数の人に引っ張られて高く出ます。
自分の位置を見るときは、平均より「中心の範囲」を見るほうが実態に近づきます。job tagの四分位の範囲や、この分布の山の位置が、その目安です。
年収への満足度も、年代で違います。同じ調査で、「満足していない」「どちらかというと満足していない」の合計は、20代が32.4%、30代が42.9%、40代が41.8%、50代が40.8%でした。
30代は、満足している人(9.5%+24.8%=34.3%)が、満足していない人より少なくなっています。責任が増える時期に、年収が追いつかないと感じる人が多い年代である可能性があると、調査は説明しています。
企業規模と産業で変わる相場
同じ年齢でも、勤め先の規模で年収は変わります。厚生労働省の統計の企業規模別の賃金(全産業、男女計)です。企業規模は、常用労働者1,000人以上が大企業、100〜999人が中企業、10〜99人が小企業です。
| 企業規模 | 所定内給与(月額) | 年額の目安 | 40〜44歳の月額 |
|---|---|---|---|
| 大企業 | 38.51万円 | 約462万円 | 42.20万円 |
| 中企業 | 32.62万円 | 約391万円 | 34.61万円 |
| 小企業 | 30.56万円 | 約367万円 | 31.89万円 |
大企業と小企業の差は、年齢が上がるほど開きます。20〜24歳では、小企業が大企業の87.6%、40〜44歳では75.6%です(大企業を100とした賃金格差)。
産業では、情報通信業(40.6万円)が全産業(34.06万円)より高くなっています。産業ごとの数字は、その産業の全職種の平均で、エンジニアだけの賃金ではありません。
地域や産業、規模の数字は、転職で動かせる条件です。同じ職種のまま環境を変えると、相場の位置が変わることがあります。
上げ方の進め方は、エンジニアが転職で年収を上げる方法に書いています。
統計と求人票の数字は、なぜずれるのか
統計で見た相場と、求人票の想定年収が合わないことがあります。ずれる理由は、主に4つです。
| 違い | 統計 | 求人票 |
|---|---|---|
| 対象 | 在籍している人全体の平均 | 募集する役割に合う人の額(下限〜上限) |
| 賞与 | 資料ごとに入る・入らないが違う | 想定年収に含める額を会社が決める |
| 残業代 | 所定内給与には含まれない | 固定残業代が想定年収に入ることがある |
| 範囲 | 産業や職種の平均 | 1つの職種、1つの会社の条件 |
平均値と中央値も違います。平均は、高い年収の少数に引っ張られます。中央値や四分位は、真ん中あたりの人の額を見る数字です。
求人票の上限は、条件を満たした人に出る額です。自分の相場を見るときは、下限と中央を見ます。
厚生労働省のjob tagには、ハローワークの求人賃金も載っています。システムエンジニア(受託開発)は、令和7年度の全国で月額36.4万円、有効求人倍率は2.54でした。
この求人賃金は、募集時の月額の統計です。賃金構造基本統計調査の所定内給与とは、集めた相手も時期も違うので、数字を直接引き算して比べません。
固定残業代が入っているかは、求人票を読むときに最も差が出ます。固定残業代込みの額面を、残業代が入らない統計と並べると、実際より高く見えてしまいます。
求人票の欄ごとの読み方は、エンジニア求人票の見方にまとめています。
採用する側の視点:提示年収は何を見て決まるか
運営会社の採用支援の現場では、提示年収は、ポジションごとに決まっている給与の幅の中で、現在の年収、等級、任せる範囲を見て決めることが多いです。
採用担当者は、相場の数字を、幅を決めるときに参照します。ただし、候補者に出す額は、相場だけで決まりません。
見ている点は、主に3つです。
- 現在の年収:前の会社での評価の目安として見る
- 等級:入社後の社内の位置で、既存メンバーとの釣り合いに関わる
- 任せる範囲:設計、リード、レビューなど、入社後の役割の大きさ
現在の年収は、その人の評価の出発点になりやすい一方、相場との差の見方は人によって違います。現在の年収が相場より低い場合は、担当範囲や成果を具体的に伝えることで、見られ方が変わります。
レバテックの調査では、エンジニア採用の課題に「オファー条件(年収)の見直し」を挙げた企業が21.0%ありました(企業のIT人材採用担当者1,000人、複数回答、2025年11月)。企業も、相場と自社の条件の差に向き合っています。
相場との差は、数字の差だけでなく、役割の差として捉えます。たとえば、相場が上の職種でも、任される範囲が小さければ、提示額は幅の下側になります。逆に、担当範囲が広い人は、同じ年代の平均より上の額が出ることがあります。
採用担当者は、提示額を上げるときに、上長や経営へ説明する根拠が必要です。根拠になるのは、担当範囲、成果、相場の3つで、相場だけを示されても動かしにくい、というのが現場の実感です。
オファーが出た後の確認の項目は、オファー面談で確認することにまとめています。
転職エージェントで相場を確かめる使い方
自分の位置を、第三者の目で確かめたいときは、転職エージェントの面談が使えます。担当者は、同じ職種の求人の年収の幅を、複数の企業の分だけ見ています。
面談では、現在の年収の内訳(月給、賞与、手当)と、担当範囲を数字で伝えます。そのうえで、同じ経験の人がどの幅で提示を受けているかを聞きます。
エージェントによって、扱う求人の領域や強みは違います。比べ方は、IT特化の転職エージェントの比較にまとめています。
SESから自社開発へ動く場合は、年収の見え方も変わります。経験の作り方は、SESから自社開発へ転職する方法に書いています。
今日からできること:自分の位置を確かめる手順
自分の年収が相場のどこにあるかは、次の順で出します。
- 現在の年収を、額面で、月給・賞与・手当(固定残業代を分けて)に書き出す(源泉徴収票や給与明細で見る)
- 所定内給与×12+年間賞与で、年額を計算する
- 自分の年代の所定内給与(情報通信業の表)と比べる。賞与を除いた額どうしで見る
- dodaの表で、自分の職種と年代の平均を見る。平均より、分布の山(500〜600万円未満が最多)との位置を見る
- 同じ職種と経験の求人票を10件ほど集め、想定年収の下限と中央を書く(固定残業代込みかも確認する)
3つの数字が重なる範囲が、自分の相場の幅です。その中で、担当範囲が上位か下位かを、実績で説明できるようにします。
差が出た場合は、年収の差を、役割の差として言葉にします。上げ方は、エンジニアが転職で年収を上げる方法に続きます。



