AI時代でも、未経験からエンジニアを目指す道は残っています。企業調査では、新卒以外のエンジニア未経験者を「すでに採用している」が28.4%、「検討中」が45.0%でした。
道は、開発職への直接応募のほかに、QA・テスト、サポート、インフラ運用、社内SEのような職種から入り、仕事の中でAIを使った開発に近づく形もあります。
未経験の採用は、いまどこに残っているか
まず企業側の数字です。レバテックの「IT人材白書2026」(2025年11月、企業のIT人材の採用担当者1,000人)では、新卒を除くエンジニア未経験者の採用について、次のように答えていました。
- すでに採用している:28.4%
- 採用を検討中:45.0%
- 採用していない:26.6%
業態で分けると、差があります。システム開発関連の会社(177社)では49.2%が未経験者を採用していました。
IT関連の事業会社(287社)は30.0%、コンサルティング(141社)は26.2%、ITとは別の事業を持つ会社(292社)は20.9%です。ITとは別の事業を持つ会社では、採用していない企業が34.2%と、他の業態より多くなっています。
未経験者の採用を始めた企業(284社)に理由を聞くと、最多は「経験者採用が難しくなっているから」の46.5%でした。次いで「ポテンシャルの高い人材が多い傾向があるから」40.8%、「成長意欲の高い人材が多い傾向があるから」37.7%、「経験者採用よりも採用コストが抑えられるから」33.8%です。
経験者を採るのが難しい分、未経験者に目を向けている企業が一定数あることが分かります。
入口になりやすい職種を比べる
厚生労働省の職業情報提供サイト(job tag)には、次の情報があります。
- 「未経験でも比較的入りやすい職業」の一覧。就業者の回答で、就業前の実務経験と訓練期間が、ともに「特に必要ない〜1か月未満」の人が50%以上の職業を、別途免許や試験が必要なものを除いて載せています
- 各職業の「就業するには」の記述
- ハローワーク求人の有効求人倍率(令和7年度、全国)
ここでの有効求人倍率は、ハローワークに出ている求人だけの数字です。民間の転職エージェントの求人や、未経験かどうかの条件は含まれません。
「求職者に対して求人がどれだけあるか」の目安として見てください。
| 職種 | 入りやすさ(編集部の整理) | 公的情報での手がかり | 身につくこと | 次に進める先 |
|---|---|---|---|---|
| QA・テスト | 比較的入りやすい | 「未経験でも比較的入りやすい職業」にデバッグ作業が掲載。特定の学歴・資格は不要。ただしソフトウェア開発のデバッグはベテランが担うことも多い。有効求人倍率2.07 | テスト設計、再現手順の書き方、不具合の切り分け、品質の見方 | テスト自動化(コードを書く)、QAエンジニア、開発職 |
| ヘルプデスク・サポート | 比較的入りやすい | ヘルプデスク(IT)は学歴・資格が不要で、IT関連知識は必要。入職後に半年程度のOJT。有効求人倍率1.36。コールセンターオペレーターは入りやすい職業の一覧に掲載 | 障害の1次切り分け、問い合わせの整理、手順書、利用者に説明する力 | 運用、社内SE、QA |
| インフラ運用・監視 | やや入りやすい | 運用・管理(IT)は学歴・資格は不要としつつ、専門学校・大学卒が多く、中途採用では経験者が求められることが多い。有効求人倍率2.2 | サーバー・ネットワーク・クラウドの基礎、監視、障害復旧、手順書の更新 | インフラエンジニア(構築)、クラウド、社内SE |
| 社内SE | 直接入る道は絞られやすい | レバテックの調査でITとは別の事業を持つ会社は、未経験採用ありが20.9%、なしが34.2% | 業務の理解、ベンダーとの調整、システムの導入と運用 | 情報システム部門の企画、内製開発、AI導入の担当 |
| (参考)開発職 | 職種や会社で分かれる | プログラマーは入りやすい職業の一覧になく、有効求人倍率は0.98(求職者のほうが多い)。システムエンジニア(受託開発)は2.54 | 設計に基づく実装、設計書の読み書き | 担当領域の拡大、リード |
会社の規模や、募集の出し方でも大きく変わります。
QA・テスト
job tagの「デバッグ作業」には、第三者の立場でソフトウェアの品質を確かめる仕事(QA)の説明があります。
入職に必要な特定の学歴や資格はないとされています。ただし、ソフトウェア開発でのデバッグは、システム開発を経験してきたベテランが担うことも多いと書かれています。
ゲームのテストは、アルバイトから正社員になる道が典型的なルートの一つです。同じ「テスト」でも、入口の広さは分野で違います。
ヘルプデスク・サポート
job tagのヘルプデスク(IT)では、トラブルの1次切り分けが主なタスクに入っています。障害対応にも通じる考え方です。
同じ記述に、ハード、ソフト、プログラミングのそれぞれが得意なメンバーでチームを組むのが一般的とあり、働きながら隣の領域に触れやすい仕事です。社外の利用者向けのヘルプデスクは「ユーザーサポート」とも呼ばれ、同じ項目に含まれます。
一方、一般の商品やサービスの問い合わせ窓口(コールセンターオペレーター)は入りやすい職業の一覧に載っていますが、ITの知識を使う度合いは求人ごとに違います。求人の中身(ITの問い合わせか、一般の問い合わせか)を見て選んでください。
インフラ運用・監視
job tagの「運用・管理(IT)」は、サーバーの稼働を監視し、障害時に復旧し、手順書を更新する仕事です。就業者(20代)からは、IT業界で働くための基礎になる知識と経験を得る入口にもなる仕事だ、というメッセージが載っています。
キャリアでは、現場のリーダー、運用・管理のスペシャリスト、社内の人事異動でプログラマーなどへ移るケースが挙げられています。
社内SE
「社内SE」は、会社によって、ヘルプデスクから、ベンダーの管理、システムの企画、内製開発まで、幅が広い呼び名です。
レバテックの調査では、AI導入を踏まえてIT人材の増加を検討している企業(391社)のうち、増やす職種に「社内SE」を挙げたのは20.5%でした。サーバーエンジニア25.1%、クラウドエンジニア21.7%に続く7番目で、テクニカルサポート・ヘルプデスク9.2%、テスト・QAエンジニア8.7%を上回っています。
需要はあります。ただ、社内SEは事業会社の情報システム部門に置かれることが多いです。
ITとは別の事業を持つ会社で未経験採用が少なめだったことを考えると、サポート職や運用職から社内で移る道も合わせて考える価値があります。
AIの影響は、職種で違う
入口の職種は、AIの影響を受けやすいものもあります。レバテックの調査で、IT人材3,000人のうち「AIに業務を代替される可能性がある」と答えた2,665人に、代替されると思う業務を聞いた結果です。
- 実装(コーディング):44.2%
- テスト(テストケース作成):37.8%
- テスト(テスト生成):31.0%
- 運用/保守(運用ルール作成):14.8%
- 運用/保守(障害時の対応):11.2%
これは、働いている人の「見立て」で、職種の将来を予測した数字ではありません。
それでも、テストの叩き台づくりは代替されやすいと見られ、障害時の対応は比較的そう見られていないことが分かります。QAに入るなら、テストケースを書くだけでなく、AIが出した叩き台が妥当かを確かめる側に回る意識が必要になりそうです。
もう一つ、同じ調査で増やす予定の職種を見ると、テクニカルサポート・ヘルプデスクは9.2%、テスト・QAエンジニアは8.7%と低めでした。入口として残っていても、AI導入を機に増やす職種としては上位ではありません。
入口の職種は、そこに留まる場所ではなく、次へ進む前提で選ぶほうが安全です。
サポート職についても、米国の給与データ(ADP)を使ったスタンフォード大学の論文が、若手の雇用が減っている職種として、ソフトウェア開発とカスタマーサポートなどを挙げています。
ただし、これは米国の結果で、書いた本人たちも因果の推定ではなく早期の記述的な指標と位置づけています。
増える側の話もあります。AI導入を踏まえてIT人材の増加を検討している企業(391社)に増やす理由を聞くと、「セキュリティ対策を強化する必要があるから」55.8%、「AIを活用した新しいサービスやシステム開発を行うため」46.8%、「導入・運用を専門的に行う人材が必要だから」37.3%に続いて、「AIに関する社員からの問い合わせに対応する必要があるから」が35.8%ありました。
社内向けのサポートや運用には、AI関連の新しい仕事が生まれています。
入口の職種から、AIを使った開発へ進む道筋
1. 入口の仕事の中で、AIを使った小さな改善を記録する
IT人材3,000人のうち、現職でAIを導入している人は1,552人で、そのうち70.0%が業務の効率化を実感しています(レバテック、2025年11月)。入口の職種でも、問い合わせの分類、テストケースの叩き台、ログの要約など、AIで手順を短くできる作業があります。
その際に確認したいのが、社内のルールです。IPAの「DX動向2026」(日本企業1,799社、2026年4〜6月)は、AIの利活用に必要なリスクマネジメントやガイドラインの整備は「道半ば」としています。
機密情報や顧客情報をAIに入力してよいかは、会社ごとに違います。自己判断で進めず、ルールを確認してから始めてください。
2. 仕事の外で、小さなものを作り切る
AIと一緒に、小さなアプリやスクリプトを作って公開します。ここで差が出るのが、AIへの任せ方です。
Anthropicの実験(ソフトウェアエンジニア52人、新しいライブラリを学ぶ課題)では、AIを使った群の理解度クイズの平均が50%、使わなかった群が67%で、特にデバッグの問題で差が大きく出ました。生成を全面的にAIに任せた人は平均40%未満、概念の質問だけをして自分で書いた人は65%以上です。
実験側は、使い方と成績の関連は示したが、因果の証明ではないと書いています。
AIの出力を、分かるまで質問して理解してから使う。この習慣は、入口の仕事の経験とも結びつきます。
3. 社内異動か転職で、開発に近い仕事へ移る
job tagの「運用・管理(IT)」には、社内の人事異動でプログラマーなどへ移るケースや、プログラマーなどのIT関連の別の職業へ転職する人の例が載っています。ヘルプデスクも、人の移動は転出・転入ともIT業界が多いと書かれています。
入口の職種で積んだ経験と、仕事の外で作ったもの。この二つが、移るときの材料になります。
行き先の名前にも注意してください。job tagの「AIエンジニア」は、機械学習の研究開発を担う仕事を指していて、大学院で情報科学や工学を修めた修士・博士が多くを占めると書かれています。
「AIを使って開発する人」と「AIそのものを作る人」は、入り方がまったく違います。
運営会社は、AIを使った自社プロダクトの開発・運用を行っています。その中で、入口の職種で身につく力が、そのまま役に立つ場面が何度もありました。
- 外部サービスの認証エラーを、外部のせいにして何度も手を入れたが、真因は自分の側の設定の不整合だった。最小の構成で切り分けるまで、原因が見えなかった(ヘルプデスクの「1次切り分け」と同じ発想です)
- 定期実行する自動処理が、一部だけ止まっていて、数日気づけなかった。止まったときに通知が出る仕組みと、失敗を見える形にする習慣が必要だった(運用・監視の仕事で身につく発想です)
- 画面の表示が遅い原因を、データベースの問い合わせ速度だと思っていたが、実際には処理の置き場所の距離と、往復の回数だった。構造で原因を切り分けるまで直らなかった
AIは、動くコードをすぐに出します。それを本番で壊さないための確認は、人が設計しなければ入りません。
入口の職種で、障害の切り分け、監視、手順書づくりを覚えることは、AI時代の開発にも役に立つ土台です。
未経験の応募で企業が見ていること
未経験者を採用している企業(284社)に、採用の課題を聞いた結果(複数回答)です。
- スキルや能力の見極めが難しい:51.1%
- 競争率が高く、母集団形成が難しい:32.4%
- 教育・育成の工数がかかる:32.4%
- 技術を習得するまでに時間がかかる:29.9%
- ギャップを感じやすく早期離職の可能性がある:15.5%
最多は、見極めの難しさです。未経験者は、実務の経験がないので、応募書類だけでは「何ができる人か」が分かりにくい。
応募する側は、見極められる材料を自分で用意することが大切になります。
エンジニア採用全体で重視する点(1,000人、複数回答)は、「コミュニケーション能力」30.7%が3年連続でトップでした。続いて「現職や前職での業務内容」26.9%、「キャリアビジョン」24.4%、「自社への志望動機」22.5%です。
「コーディング・技術力」は15.6%、「資格や免許」は8.4%、「業務外の自己研鑽内容」は4.1%でした。これは未経験者に限った数字ではありません。
運営会社は、企業の採用支援を行っています。その現場で、未経験の応募書類や面談を見るときに確認するのは、おおむね次の4点です。
- なぜその職種から入るのか。 最初から開発職でなく、QAや運用を選んだ理由が、自分のキャリアの筋として説明できるか
- 前職の経験のうち、入口の職種で使えるものは何か。 前職の業務内容は、重視する点の2位でした。接客、事務、販売で身につけた力を、問い合わせ対応や手順書づくりにつなげて話せるか
- 学んだことを、小さくても形にしたか。 資格や講座の修了だけでなく、何かを作って、どこで詰まり、どう確かめて直したかを話せるか
- AIの出力を、自分で確かめているか。 AIを使ったか、ではなく、出力をどう確認したかを聞きます。ここは、書類に出ない部分で、面談で差がつきます
資格や自己研鑽の内容が重視される割合は低めでしたが、これは「不要」という意味ではありません。見極める材料として単独では決め手にならず、前職の経験や、形にした成果と組み合わせて初めて伝わる、と受け止めています。
今日からできること
- 入口にしたい職種を、2つに絞る。 上の表で、身につくことと、次に進める先を見て、自分の前職と近いほうを選びます
- 求人票で「未経験可」の中身を確認する。 研修の有無、配属される仕事(開発か、テスト・運用か)、入社後に任される範囲を見ます。同じ「未経験歓迎」でも、会社によって実際の仕事が違います
- 今の仕事の繰り返し作業を、1つ選ぶ。 手順を書き出し、社内のAI利用ルールの範囲で、短くできる部分を試します。やったことと結果は、記録に残してください
- 小さなものを1つ作り切る。 AIと一緒に作り、何をAIに頼み、何を自分で決め、どこで確かめ、何を直したかを、1枚にまとめます
- AIには「答え」より「理由」を聞く。 生成されたコードや手順は、動く理由と壊れる条件を、自分の言葉で説明できるまで確かめます
AI時代の未経験の入口は、一つの扉ではなく、複数の道に分かれています。どの道が自分に近いかは、前職の経験と、いま手を動かせる時間で変わります。
まずは入口になる職種を2つ選ぶところから始めてください。



