未経験の志望動機は、熱意の強さを伝える文章ではありません。採用担当者が確かめているのは、仕事を分かって選んでいるか、動機を裏づける行動があるか、この会社である理由があるかです。
書く順番は、結論、なぜエンジニアか、入社までの行動、なぜこの会社か、入社後の働き方。各ブロックを1〜2文にすると、面接で1分ほどで話せる長さに収まります。
志望動機は、未経験の「見極めの材料」として読まれる
レバテックのIT人材白書2026(企業のIT人材採用担当者1,000人、2025年11月)で、エンジニア未経験者を採用している284人に採用の課題を聞くと、最多は「スキルや能力の見極めが難しい」の51.1%でした。
実務の経歴がない応募者は、書類から「何ができる人か」が読み取りにくくなります。そのため、志望動機は、経験の代わりに見極めの材料として読まれます。
同じ調査で、エンジニア採用で重視する点(1,000人、複数回答。未経験者に限った数字ではありません)は、「キャリアビジョン」24.4%、「自社への志望動機」22.5%、「転職理由」20.7%でした。
「コーディング・技術力」は15.6%、「資格や免許」は8.4%、「業務外の自己研鑽内容」は4.1%です。学んだことを並べるだけでは決め手になりにくく、志望動機の中で、何のために学んだのかとつなげて初めて材料になります。
未経験者の採用を始めた理由は、「経験者採用が難しくなっているから」46.5%、「ポテンシャルの高い人材が多い傾向があるから」40.8%、「成長意欲の高い人材が多い傾向があるから」37.7%でした。企業が見たいのは、これから伸びる根拠です。
未経験の採用が、どの業態にどれだけ残っているかは、未経験からエンジニアはAI時代でも目指せる?で比べています。
採用担当者が確かめている4つのこと
運営会社の採用支援の現場で、未経験の応募書類や面談を見るとき、志望動機から読み取ろうとするのは次の4点です。
| 確かめること | 読み取る場所 | 足りないときの読まれ方 |
|---|---|---|
| 仕事を分かっているか | 職種の選び方。仕事の大変さへの言及 | 憧れで選んでいて、入社後にギャップが出そう |
| 動機に根拠があるか | 前職などの具体的な場面。きっかけ | どの職種でも言える話で、続くか分からない |
| 入社前に動いているか | 学習の期間、作ったもの、直した経験 | 熱意が言葉だけで、入社後に自分で学べるか分からない |
| なぜこの会社か | 事業、技術、仕事内容への言及 | 他社でも通じる。受かればどこでもよいように見える |
4つは、つながって読まれます。根拠のある動機があって初めて、入社前の行動が「その動機のための行動」として伝わります。
逆に、行動の記録だけがあって動機の根拠がないと、資格のために学んだ人にも見えます。どれか1つを厚くするより、4つを1本の筋でつなぐほうが、読み手は判断しやすくなります。
書く順番は、5つのブロックで組む
転職サービスの志望動機の解説は、結論、エピソード、入社後の貢献の順を型として示しています。未経験の場合は、エピソードの部分を「なぜエンジニアか」と「入社までの行動」に分けると、採用担当者が確かめる4点に対応させられます。
| ブロック | 書くこと | 目安 |
|---|---|---|
| 1. 結論 | 応募先と職種、志望の一文 | 1文 |
| 2. なぜエンジニアか | きっかけの場面と、仕事への理解 | 2文 |
| 3. 入社までの行動 | 学習の期間、作ったもの、直した経験 | 2文 |
| 4. なぜこの会社か | 事業、技術、仕事内容と自分の接点 | 2文 |
| 5. 入社後 | 最初に任されたい範囲と、伸ばしたいこと | 1文 |
冒頭は、前職の話ではなく、応募先と職種を言い切る一文から始めます。読み手が最初に知りたいのは、「何に応募しているのか」だからです。
「なぜエンジニアか」は、前職の場面から書く
「ITに興味がある」「手に職をつけたい」だけでは、エンジニアである必要が伝わりません。paizaの面接アドバイスも、「手に職」だけならエンジニアでなくてよい、という点を挙げています。
材料は、前職で起きた具体的な場面にあります。次の5つの問いに、思い出せる範囲で書き出します。
- 仕事で「これは仕組みで解決できる」と思った場面は何か
- そのとき、自分で何かを試したか(Excelのマクロ、スクリプトなど)
- エンジニアの仕事の大変さ(障害対応、保守、レビュー)を知ったうえでも、選ぶ理由は何か
- 開発職を選ぶ理由は何か。QA、運用、社内SEではない理由は何か
- AIがコードを書く時代に、作る側に回る理由は何か
最後の2つは、面談で触れられやすい点です。開発職以外の入口は、未経験からエンジニアはAI時代でも目指せる?で比べています。
AIについての答えは、「AIが書けるから不要」でも、「AIに任せ切る」でもありません。AIが出した結果を確かめ、判断し、責任を持つ側の仕事に関心がある、という根拠が必要です。
AIで作った経験をどう見せるかは、バイブコーディングは就職・仕事になる?で扱っています。
「入社までに何をしているか」は、記録で見せる
未経験の意欲は、「熱意があります」ではなく、すでに動いた記録で伝わります。マイナビ転職のIT志望動機の解説は、ポートフォリオ制作や資格の学習のような、すでに行動に移している実績を述べて初めて、意欲がポテンシャルとして評価される、と説明しています。
paizaの面接アドバイスは、「勉強しています」だけで話が終わる人を挙げ、フレームワークなどを実際に使って試作するところまで話すことを、対策にしています。
志望動機に入れる記録は、次の4点です。
- 期間と頻度(例:半年、平日の夜に1〜2時間)
- 作ったもの(公開URLやリポジトリ。誰が使っているか)
- 詰まった箇所と、直し方
- 次にやること
資格は、決め手ではなく、学習の道筋を示す材料です。IPAの基本情報技術者試験とITパスポート試験は、どちらもCBT方式で随時受験できます。
取った資格より、その勉強の中で何を作り、どこに詰まったかを書きます。
AIで作った成果物なら、何をAIに任せ、何を自分で決め、どこを確かめたかを分けて書きます。Anthropicの応募者向け案内は、自分で書いた下書きをAIで推敲することは認め、経験していないことをAIに作らせることは認めていません。
作品の見せ方は、AIで作ったポートフォリオは評価される?に書いています。
「なぜこの会社か」は、3点だけ拾う
「なぜこの会社か」は、募集要項と公開情報から、次の3点を拾って組み立てます。
- 事業:誰のどんな課題を解く会社か
- 技術と開発体制:使っている技術、チームの規模、レビューの仕組み
- 未経験者の受け入れ方:配属される仕事と、任される範囲
材料は、求人票、採用ページ、プレスリリース、導入事例、技術ブログ、カジュアル面談です。求人票の読み方は、エンジニア求人票の見方で説明しています。
文章のテストは1つです。会社名を別の会社に入れ替えても通じる文は、削ります。
マイナビ転職は、同じ業界の別の会社でも通じる志望動機を、NG例に挙げています。
paizaの面接アドバイスは、自社サービスの会社に「いろいろな開発に携わりたい」と言う例を、NGの傾向に挙げています。「何を作りたいか」を具体的に言い切るほうが、その会社を選んだ理由として伝わります。
教育制度は、理由の中心にしません。マイナビ転職は、教育制度が整っていることを志望理由にすると、意欲や関心が薄く見える、と説明しています。
減点されやすい6つの書き方
| 書き方 | 採用担当者の読み取り | 直す方向 |
|---|---|---|
| 「入社後に学びたい」「研修で一から身につけたい」 | 受け身で、学びの場を探しているように見える | すでに学んだ範囲と、入社後に伸ばす範囲を分ける |
| 給与、福利厚生、勤務地、教育制度が理由 | 仕事への関心が見えない | 事業や仕事の中身を、理由の中心にする |
| 社名を替えても通じる | 企業研究が浅く、受かればどこでもよいように見える | 事業、技術、仕事内容から1点を、具体的に挙げる |
| 「ITに興味がある」「手に職をつけたい」だけ | 根拠がなく、エンジニアである必要が伝わらない | 前職の具体的な場面から書き始める |
| 前職への不満が中心 | 他責に読まれる。同じ不満が起きたら辞めそうに見える | 不満の裏側にある「やりたいこと」に言い換える |
| 経験があるように書く、知ったかぶり | 面接の深掘りで崩れる | 未経験であることを書き、学んだ範囲を具体的に書く |
マイナビ転職エージェントの解説も、知ったかぶりは業界に詳しい面接官に見抜かれ、嘘が分かると採用の可能性が下がる、と説明しています。
マイナビ転職は、転職理由と志望動機に一貫性がないと、本心で話していないのでは、と疑われると説明しています。前職の不満は、志望動機の「やりたいこと」の裏返しとして書き、2つを一貫させます。
例文を1本だけ見る
物流会社の事務職から、配送管理サービスの開発職に応募する場合の例です。
運送会社向けの配送管理サービスを開発している貴社で、Webエンジニアとして働きたいと考え、応募しました。
前職の物流会社では、配車の手配を毎日Excelで管理していましたが、電話で入る変更が表に反映されず、誤配車が月に数回出ていました。マクロで一部を自動化すると入力ミスが減り、手作業を仕組みに置き換える仕事に関心を持ちました。
この1年は、平日の夜に1日1〜2時間、PythonとJavaScriptを学び、配車表を共有するWebアプリを作って、前職の同僚3人に使ってもらっています。更新が重なると表が壊れる不具合が出たため、原因を切り分けて直しました。基本情報技術者試験にも合格しています。
貴社を選んだのは、公開されている導入事例で、配車の変更をリアルタイムで共有する機能に力を入れていると知ったからです。変更が共有されない困りごとを現場で見てきたので、使う側の視点を開発に生かせると考えています。
入社後は、まず既存機能の改修から任せていただき、現場の声を機能の優先順位に反映できるエンジニアを目指します。
5つのブロックは、次のように対応しています。
- ブロック1:応募先と職種を言い切る一文
- ブロック2:前職の具体的な場面と、仕組みを作る側に関心を持ったきっかけ
- ブロック3:学習の期間、作ったもの、直した不具合、資格
- ブロック4:公開情報にある事業の特徴と、自分の経験の接点
- ブロック5:最初に任されたい範囲と、伸ばしたいこと
固有名詞、数字、出来事は、自分の事実に差し替えてください。差し替えられない文は、残さないでください。
面接では、書いた1文ごとに質問される
書類の志望動機は、面接の質問のもとになります。採用担当者は、書かれた文の1つ1つに、「それはどういうことか」と聞き返します。
運営会社の採用支援の現場で、未経験の方に聞くのは、たとえば次のようなことです。
- 作ったものの、いちばん詰まった箇所はどこで、どう直しましたか
- そのアプリを使う人が10倍に増えたら、どこが壊れそうですか
- AIにどこまで任せて、どこを自分で確かめましたか
- この会社の事業で、いま難しそうな点は何だと思いますか
- 入社後の半年で、何ができるようになっていたいですか
答えに詰まっても、「確認していません」と言い、確認の方法を添えられる人は、任せられる範囲を判断しやすいと受け止めています。作ったふりをするより、確かめていない点を、確かめていないと言えることが、信頼につながります。
聞かれやすい質問の全体は、エンジニアの面接でよく聞かれる質問で整理しています。
今日からできること
- 前職で「仕組みで解決できそうだった場面」を3つ書き出す
- 学習の記録を、期間、作ったもの、詰まった箇所、次にやること、の4点にまとめる
- 応募先を1社決め、事業、技術、未経験者の受け入れ方の3点を拾う
- 5つのブロック、8文前後で下書きし、会社名を入れ替えても通じる文を削る
- 書いた文の1つ1つに、自分で「なぜ」と3回聞き返す
文章を整える前に、素材を集めるところから始めてください。入口の職種や学び方を選ぶ段階なら、プログラミングスクールの比較も使えます。



