職務経歴書に「Claude Codeを使っています」と書くだけでは、使ったことは伝わっても、何を解決し、どう判断したかは伝わりません。評価されやすいのは、「課題」「AIの運用の決め事」「測った成果」「出力をどう確かめたか」の4つを、1つの案件にそろえて書いた経歴です。
採用側は「使っています」から、何を読み取れないのか
まず、AIの経験は見られ始めています。
ファインディが2025年7月9〜18日に、同社の転職サービス「Findy」と開発支援プラットフォーム「Findy Team+」の利用企業220社に聞いた調査(ITmedia報道)では、AI技術やツールの活用経験が候補者の評価に影響するかという問いに、57.0%の企業が「重視している」と答えました。2025年2月の前回調査は18.1%でした。
企業の声として、若手でもAIの学習に積極的な人は採用した例と、AIを活用せず消極的だったため不採用にした例が紹介されています。
一方で、「使っています」の一文からは、読み手が知りたいことが分かりません。読み取れないのは次の3つです。
- 何が変わったか:転職ドラフトの記事(2026年9月)は、評価の軸が「何を作ったか」から「それでどう変わったか」へ移ったと書いています。AIでコードを生成できるため、実装そのものは差になりにくく、課題へのアプローチと解決の過程が評価対象になるという説明です
- 本当に速くなったのか:METRが2025年7月に公表した調査では、大規模なオープンソースの開発を数年担当してきた経験者16人が、実際の課題246件に取り組みました。AIを許可した課題は、完了までに19%長くかかりました。ところが参加者は、事前に24%速くなると予想し、終了後も約20%速くなったと感じていました。対象は2025年前半のツール(主にCursor ProとClaude 3.5・3.7 Sonnet)で、人数も少なく、METR自身がこの結果は古いとして2026年2月に更新データを出しています。分かるのは、体感の「速くなった」と測った結果が食い違うことがある、という点です
- 本人が説明できるか:キッカケクリエイションが2026年2月24〜27日に、コードレビューを担当するITエンジニア322名へ行った調査では、AI生成コードのレビュー経験がある277名が、レビューで見つかった問題として最も多く挙げたのが「提出者本人がコードの内容を説明できなかった」で、49.5%でした(上位3つまでの複数回答)。書類に書いたAIの経験も、本人の言葉で説明できなければ、読み手に不安が残ると考えられます
悪い書き方と良い書き方:1組で見る
職務経歴書の1案件の欄に書く、と想定した例です。
悪い書き方です。
Claude Codeを活用して開発効率を向上させました。
良い書き方です。
- 課題:社内向け受発注システムの改修で、PRのレビュー待ちが平均2営業日かかり、小さな修正の反映が遅れていた
- 取り組み:コーディング規約とレビュー観点をCLAUDE.mdに書き、PRを出す前にClaude Codeに自己レビューさせる運用を、チームに提案して試行した。AIの指摘は担当者が最終判断し、認証・権限まわりの変更は対象外とした
- 成果:試行した2か月(PR約40件)で、レビュー待ち時間の中央値を2営業日から0.8営業日に短縮した。導入前の2か月と比べて計測した
- 確認:AIの修正案のうち、既存のテストは通るが境界値の扱いが変わるものが2件あり、レビューで止めた。以降、境界値のテスト追加を運用ルールに入れた
前者は、何が遅かったのか、どの範囲をAIに任せたのか、効率がどれだけ上がったのかが分かりません。「効率が向上した」は感想で、検証できません。
後者は、同じ出来事を、課題・取り組み・成果の順に事実で書いています。転職ドラフトの記事は、課題・取り組み・成果で筋を通すことと、主観を客観の事実に直すことを助言しています。
書き換えで足したのは4つの要素
良い書き方に足したのは、次の4つです。
- 課題:起点になった出来事です。チームの数字や、実際に困った場面で書きます
- 運用の決め事:どこまでAIに任せ、どこは人が決めたかです。Claude Codeの公式ドキュメントは、CLAUDE.mdにコーディング規約やアーキテクチャの決定、レビューのチェックリストを書いて毎回読み込ませる使い方や、フックでコミット前にlintを走らせる使い方を説明しています。職務経歴書では、機能名を並べるのではなく、決めた範囲とルールを書きます
- 成果:測った数字と、測り方です。期間、件数、何と比べたかを添えます。METRの調査が示すように、体感の数字は実態とずれることがあります
- 確認:AIの出力で、止めたもの・直したものです。面接で深掘りされやすく、本人の理解が出る欄です
運営会社が自社のプロダクトをAIと開発・運用する中でも、エラーが消えて直ったように見えた変更が、実は処理の品質を削っていた件がありました。数字で測るまで気づけなかったため、成果と確認は測った数字で書くことを勧めます。
経緯はAI開発の失敗事例9つに書いています。
どの欄に何を書くか
- 職務要約(3〜5行):AIの経験は1行にとどめます。ツール名ではなく、導入した範囲と成果の要点を書きます
- 職務経歴(案件ごと):4つの要素を書く本命の欄です。転職ドラフトの記事は、直近の経歴とアピールしたい経歴は詳しく、3年以上前や材料が弱いものは簡潔に書くよう助言しています。同じ記事では、転職ドラフトのキャリアアドバイザーが、評価されやすい職務経歴書の条件として、記載内容が充実していること、何をしたかに加えどう解決したかまで書くこと、グループやチーム単位以上の視座があること、箇条書きで見やすいこと、課題・取り組み・成果に筋が通っていることの5つを挙げています
- スキル欄:ツール名に、使った期間、用途、任せた範囲を添えます。ツール名だけを並べると、読み手は深さを判断できません
- 自己PR:どんな種類の作業をAIに任せ、どんな種類は人が決めるかという線引きの基準を書きます。AIとの分担を自分で設計できることが伝わります
記載の量についても、データがあります。同じ記事は、転職ドラフトスカウトのデータで、1案件あたりの平均記載文字数が平均以上のグループの指名数が、平均未満のグループの約2倍だったと示しています。
対象は東京勤務を希望するユーザーで、2023年1月以降の職務経歴を2026年8月26日時点で抽出したものです。両グループの現年収の中央値は、どちらも600万円程度でした。
記事自身が、相関を示したもので因果関係や内定を保証するものではないと注記しています。
書かないほうがよいこと
- 体感の数字:測っていない「2倍速くなった」は書きません。測っていないなら、測っていないと書くか、今日から測り始める項目を決めます
- 経験していないことをAIに書かせた内容:Anthropicの応募者向け案内は、自分で書いた下書きの推敲にClaudeを使うのは可、経験していないことを作らせるのは不可としています。Cygamesの新卒選考も、エントリーシートはアイデア出しや文章の推敲に限りAIの利用を認めています。応募先ごとに規定があるので、書類を出す前に確認します
- ツール名の羅列:Claude Code、Cursor、Copilotと並べるだけでは、どれをどの深さで使ったか分かりません
- 勤務先の守秘情報:社名、顧客名、金額は、書ける範囲を確認してから書きます。伏せる場合は、規模や期間の相対的な表現で補います
面接で聞かれやすいこと:編集部の見立て
書いた内容は、面接で深掘りされます。編集部では、次の質問に答えられるかを確かめておくことを勧めます。
根拠は、Canvaが技術面接で評価すると書いている、AI生成コードの問題を見つけて直せるか、コードを理解し判断の理由を説明できるか、という観点です。
- AIの出力が一番間違っていたのはどこで、どう気づきましたか
- どこまでAIに任せ、どこは自分で決めましたか。なぜそこで線を引きましたか
- その数字は、何と何を、どう比べて出しましたか
- AIがなかったら、同じ作業をどう進めましたか
- 導入に反対や懸念があったとき、どう対応しましたか
最後の質問は、転職ドラフトの記事に出てくる、Claude Codeの導入を提案して通した経験と、却下された経験の両方を振り返る場面に近いものです。却下された背景には、コストなど、伝えきれていなかった情報があったと語られています。
うまくいった話だけでなく、うまくいかなかった判断も書類に1行あると、判断の基準が伝わりやすいと考えます。
仕事で使っていない、個人開発しかない場合
仕事でAIコーディングツールを使えていない人もいます。その場合も、同じ4つの要素で書けます。
個人開発や社内の試行でのAI利用は、仕事の経験と区別して書きます。
JACリクルートメントのポートフォリオの解説は、採用側が見るのは技術名の列挙より、担当範囲、判断の理由、改善による変化だと書いています。規模が小さくても、課題、決め事、測ったこと、確認したことがそろっていれば、読み手の判断材料になります。
作品側の書き方は、AIで作ったポートフォリオは評価されるかにまとめています。
今日30分でできること
- 直近の案件を1つ選びます
- 課題、運用の決め事、数字、確認を、1行ずつメモします
- 数字がないものは、測れていないと認めたうえで、今日から測り始める項目を1つ決めます
- 数字の横に、期間と比べた相手を1行で添えます
- 前の章の5つの質問に、声に出して答えます。詰まったところが、書類に足すべき情報です
- 応募先の募集要項や案内で、応募書類でのAI利用に規定がないか確認します



