エンジニア志望のESとガクチカは、技術の量を競う書類ではありません。採用担当者が見ているのは、課題に対して自分が何を決め、結果から何を直したかが一続きで読めるかどうかです。
技術経験が少なくても、個人開発やインターンが多くても、書く順番は同じです。ここでは、採用担当者の読み方、組み立て方、経験の量に応じた書き分け、減点されやすい書き方を、例文と提出前のチェックリストまで順に示します。
ESを読む採用担当者は、何を探しているか
運営会社は、複数のIT企業の採用支援で、応募書類を読む側に立っています。ESには、書類選考の判断材料と、面接官が質問を作る材料という2つの役割があります。
採用担当者は、「この一文について、面接で何を聞けるか」を探しながら読みます。聞くことが思い浮かぶ書類は、面接に進んだあとの会話も具体的になるためです。
探している情報は、次の3つに整理できます。
- どんな状況で、何を課題と捉えたか
- その中で本人が何を決めたか。ほかの選択肢と、選んだ理由
- 結果をどう確かめ、次に何を直したか
この3つが読み取れると、本人の判断の跡が見えます。技術名の多さや成果の大きさより、この3つの書き方で差がつきます。
経団連が2021年8〜10月に会員企業などへ行ったアンケート(回答381社、従業員1,000人以上が約7割)では、大卒者に特に期待する資質は「主体性」が84.0%、「チームワーク・リーダーシップ・協調性」が76.9%でした。能力では「課題設定・解決能力」が80.1%、「論理的思考力」が72.1%です。
選考で重視する学生の学修経験(2つまで回答)は、「大学での学修履歴」が83.8%、「課外活動」が79.3%でした。大学での学修履歴のうち最も重視するのは「研究室・ゼミでの研究内容」で、46%です。
ガクチカの題材は、技術の話に限らなくて構いません。研究、ゼミ、課外活動は、どれも正面から読まれています。
エンジニア職では、技術面も別の場で見られます。レバテックのIT人材白書2026(2025年11月、新卒エンジニア採用を実施する企業の採用担当者484名)では、選考要素にプログラミングスキルを含む企業が73.8%でした。
技術がES以外の場面でも見られる以上、ESの役割は技術を証明しきることではありません。面接やテストの場に進む理由を作ることが、ESの仕事になります。
もう1つ、書き方そのものも見られています。マイナビの2027年卒企業新卒採用予定調査(1,579社、2026年1〜2月)では、AI時代に新卒入社の社員へ求めるスキルとして「コミュニケーション力」が50.0%で最多でした。
最初にESを読むのが人事担当者の企業では、専門用語を知っている前提にできません。技術の話も、専門外の人が1回読んで分かる言葉で書きます。
エンジニア職のESにある5つの設問と、書く材料
設問の呼び方は企業ごとに違いますが、聞いていることはおおむね次の5つに分かれます。
| 設問 | 採用側が知りたいこと | 書く材料 |
|---|---|---|
| 志望動機 | なぜその会社か。入社後も続くか | 事業や仕事への関心の根拠。自分の経験との接点 |
| ガクチカ | 課題への向き合い方。別の場でも再現できるか | 状況・課題・判断・結果・次 |
| 自己PR | 強みと、それが仕事でどう出るか | 強みが出た1つの場面 |
| 研究・技術経験 | 技術の深さと、説明する力 | 目的・手法・自分の担当 |
| 入社後にやりたいこと | 配属や成長の方向が合うか | 職種のイメージ。1年目に身につけたいこと |
1つの経験を複数の設問に使い回すと、読む側には同じ話の繰り返しに見えます。設問ごとに、同じ経験の見せる面を変えます。
たとえば1つの個人開発でも、設問によって次のように使い分けます。
- ガクチカ:課題と判断の過程
- 自己PR:強みが出た1つの場面
- 志望動機:その経験から生まれた関心と、志望先の事業とのつながり
志望動機だけは、複数社に出すときも会社ごとに書き直します。事業や仕事の中から具体的に1つ挙げられるように、企業の見方は新卒エンジニアの企業の選び方で整理しています。
ガクチカは「状況・課題・判断・結果・次」の5段で組む
ガクチカは、材料を5段に分けて並べると、書き漏れが減ります。400字で書くときの配分の目安は、次のとおりです。
| 段 | 書くこと | 字数の目安 | 読み手が読み取るもの |
|---|---|---|---|
| 状況 | いつ、どんな場で、自分はどんな立場か | 約60字 | 規模と役割 |
| 課題 | 何が困りごとだったか。事実か数字で | 約80字 | 課題の捉え方 |
| 判断 | 選択肢のうち何を選び、なぜ選んだか | 約140字 | 主体性と考え方 |
| 結果 | 何がどう変わったか。数字で | 約60字 | 成果の確かめ方 |
| 次 | 残った問題と、その後の行動 | 約60字 | 改善の習慣 |
一番厚くするのは、3段目の「判断」です。状況の説明に字数を使い切ると、判断を書く場所がなくなります。
判断を書くときは、「選ばなかった案」を1つ入れます。選ばなかった案があると、読み手は、ほかの案も考えたうえで決めた人だと読めます。
例文を1本:研究室の集計作業を自動化した話
研究室の作業を題材にした例を1本だけ示します。5段をどう文にするかを見るための例です。
研究室で毎週2時間かかっていた実験データの集計を、Pythonで自動化しました。
きっかけは、手作業の貼り付けミスで同じ週のデータが二重に入り、ゼミ発表の直前に結論が変わったことです。手順を洗い出すと、人が手を入れる工程は4つあり、そのうち2つでミスが起きていました。
全部を自動化すると私しか直せない道具になるため、まずミスの起きた2工程だけをスクリプトにし、入力はメンバー4人が使うCSVに統一しました。
結果、集計は2時間から約10分になり、直近8週で貼り付けミスは0件です。一方で、ファイル名の付け方が人によって違うとエラーになる問題が残ったため、入力時の確認を追加し、使い方を書いて後輩に引き継ぎました。
1文目に「何をしたか」を置いています。結論を先頭に置くと、斜め読みでも要点が拾えます。
採用担当者は、この文章から次のような質問を作れます。
- なぜ4つの工程のうち、2つだけを自動化したのですか
- 貼り付けミスが0件だったことは、どうやって確かめましたか
- ファイル名のエラーには、ほかにどんな直し方がありましたか
質問が作れるのは、数字、固有の事実、選ばなかった案が文に入っているためです。面接で話せる範囲だけを書き、話せないことは書かないことが、ES全体の基準になります。
同じ5段は、アルバイト先のシフト調整や、サークルの会計の仕組みづくりでも使えます。題材より、5段が埋まっているかが読まれます。
技術経験が少ない人は、材料の探し方から変える
レバテックのIT人材白書2026には、20〜59歳のIT人材3,000名のうち、新卒でエンジニアになった1,775名への質問があります。学生時代にプログラミング学習をしていた人は67.9%で、約3割(32.1%)は未経験で就職していました。
学習経験のある1,206名の学習方法は、「学校の講義を受ける」が69.5%で最多です。20〜59歳が対象のため、今の学生の割合とは異なりますが、講義を中心に学んで入った人が多いことは分かります。
技術経験が少ない人は、次の4つから材料を探します。
- 授業のグループ課題や卒業研究での、自分の担当と判断
- ゼミや研究室での、手順や道具の改善
- アルバイトやサークルでの、仕組みづくり
- 今学んでいる内容と、その期間、作ったもの
先ほどの白書では、選考要素にプログラミングスキルを含まない企業が26.2%あり、システム開発関連会社(SIer・SES・派遣・受託開発など)では35.3%でした。含む企業に出すESでは、「いつから、何を、どこまで学んだか」の記録が、経験の少なさを補います。
学習の記録は、期間、作ったもの、つまずきと直し方の3つで書きます。「プログラミングに興味があります」は、読み手が質問を作れません。
何週間続けたか、何を作ったか、どこでつまずいて何を直したかを、数字と固有の名前で書き、行動と結果が見える形にします。
避けたいのは、技術らしく見せるために、授業で1回触っただけの言語や分野を並べることです。面接で深掘りされたときに答えられず、ほかの記述まで疑われます。
入社後の育成を重視して企業を選ぶ見方は、新卒エンジニアの企業の選び方にまとめています。経験の浅さが前提の会社を探す手がかりになります。
個人開発・インターンがある人は、書く量より「判断の跡」
個人開発は、機能の一覧より、判断の記録が読まれます。ESには、次の5つを入れます。
- 誰の、どんな困りごとを解決するものか
- 技術を選んだ理由と、比べた候補
- 使った人数や処理した件数など、規模が分かる数字
- チームなら自分の担当、1人なら自分が決めたこと
- 壊れたときの原因の切り分けと、直し方
ESの字数に収まらない部分は、GitHubのREADMEや作品のページで補います。ESには、どこを読んでほしいかを1行添えます。
READMEに書く内容は、AIで作ったポートフォリオは評価されるかにまとめています。AIを使って開発した場合の説明の仕方は、新卒エンジニアの就活はAIでどう変わったかに書いています。
使った技術の一覧は、主に使った3つまでに絞ります。それぞれに「何に使ったか」を一言添えると、「使った」と「説明できる」が区別できます。
インターンについても、レバテックの27卒調査(エンジニア職志望144名、2025年12月)があります。約8割が1日以上のインターンに参加しており、参加先から内定を得た人は16.2%、参加後に選考へ進まなかった人は37.8%でした。
参加している学生が多いため、インターンの経験があること自体より、中身の書き方で差が出ると考えられます。
インターンのESには、次の4つを書きます。
- 期間と、チームの人数、自分の役割
- 担当したタスクと、自分が決めたこと
- コードレビューや助言で直した点
- 守秘に触れない範囲の数字
数字は、インターン先の案内で許されている範囲で書きます。書いてよいか分からない数字は、人事に確認するか、「約半分に短縮」のような相対値に置き換えます。
ハッカソンや競技プログラミング、OSSへの参加も同じです。順位や受賞より、そこで自分が何を決めたかを書きます。
減点されやすい書き方6つ
減点されやすい書き方を、読み手の側で何が起きるかとセットで並べます。
| 書き方 | 読み手に起きること | 直し方 |
|---|---|---|
| 技術名を10個以上並べる | どれが実際に使えるのか判断できない | 主に使った3つに絞り、用途を一言足す |
| 「リーダーシップを発揮しました」で終わる | 行動が見えず、質問が作れない | 何を決め、誰に何を頼んだかを書く |
| 「大成功」「好評でした」で終わる | 成果の大きさを比べられない | 数字か、前後の比較にする |
| 主語が「チームで」ばかり | 本人の判断が読み取れない | 「私は〜と決めた」の文を1つ入れる |
| 整っているが具体性がない | AIで作った文章と受け取られる | 固有名詞、数字、選ばなかった案を足す |
| 設問とずれた内容を書く | 問いに答えていない印象になる | 設問の最初の言葉を、1文目に使う |
5つ目は、SHIFT AIの調査で数字が出ています。2026年5月に新卒採用担当275名へ聞いたところ、応募書類を生成AIで作ったと感じる割合は76.0%で、理由の1位は「表現は洗練されているのに、具体的なエピソードや数字が伴っていない」の57.4%でした。
AIを使ったかどうかより、具体性が伴っているかどうかが、読み手の判断の分かれ目になっています。AIの使い方は、新卒エンジニアの就活はAIでどう変わったかにまとめています。
経験を大きく見せる書き方も、面接で崩れます。小さくても、事実を細かく書いたほうが、質問に答えやすくなります。
ESで迷いやすい点
提出前によく迷う点のうち、3つを挙げます。
- 字数が足りないとき:「判断」の理由と「次」を厚くします。字数が余るときは、「状況」を削ります
- ガクチカの候補が複数あるとき:規模や成果の大きさでなく、判断を一番厚く書ける経験を選びます
- 複数社に同じESを出すとき:志望動機は会社ごとに書き直し、ほかの設問は事実を変えずに設問へ合わせます
もう1つは、設問に家族や尊敬する人物を聞く項目があったときです。厚生労働省は、家族に関すること、尊敬する人物、購読新聞・雑誌・愛読書などを、応募用紙や面接で把握すると就職差別につながるおそれがある事項として挙げています。
ESにこうした設問があったときは、大学のキャリアセンターや、最寄りのハローワーク、都道府県労働局に相談できます。
提出前のチェックリストと、今週の進め方
提出前に、次の5つを確かめます。
- 1文目に、何をしてどうなったかが書いてあるか
- 判断の文があり、選ばなかった案が1つ入っているか
- 結果が、数字か前後の比較になっているか
- 面接で聞かれそうな質問を3つ書き、答えられるか
- 技術に詳しくない人が読んでも、意味が通じるか
そのうえで、今週は次の順で進めます。
- 経験を3つ選び、5段それぞれを箇条書きで書く。1つにつき30分を目安にします
- 設問ごとに、使う経験を決める。同じ経験の使い回しを避けます
- 1つ目を400字で書き、例文と並べて形を見比べる
- 面接の想定質問を3つ作り、声に出して答える
- キャリアセンターや先輩に読んでもらい、「どこで質問したくなったか」を聞く
レバテックの27卒調査では、エンジニア職志望の学生が就職活動で信頼している相談先は「キャリアセンター」が52.1%で1位でした。
質問したくなった箇所が、そのまま面接で聞かれる箇所になります。そこを先に書き足しておくと、面接の準備にもなります。



