27卒のエンジニア志望学生の約7割が、すでに就活でAIを使っています。変わったのはESやガクチカを「書く作業」で、企業が選考で見ているのは、その中身を自分の言葉で説明できるかどうかです。
就活でAIを使うことは、もう前提になっている
レバテック(調査主体はレバレジーズ)が2026年2月に発表した調査では、27卒のエンジニア職志望学生144名のうち、就活でAIを「利用している」と答えた人は70.8%でした。2026年卒に同じ質問をした前年は47.2%で、1年で20ポイント以上増えています。
エンジニア職以外の志望者は52.7%で、エンジニア志望のほうが利用が進んでいます。調査は2025年12月です。
使い道で最も多いのは「エントリーシートの作成・添削」(71.6%)で、「自己分析などの思考の整理」(57.8%)、「企業研究」(38.2%)が続きます。
学情が27卒の会員学生259人に2026年6月に聞いた調査でも、同じ方向でした。生成AIを「利用していない」は8.5%で、9割超が就活のどこかの場面で使っています。
就活で大変だったことのうち「ESの自己PRや志望動機の文章を完成させること」は27.4%で4位に下がりました。この項目は2023年卒から3年連続で1位だったと、学情は説明しています。
数字が調査ごとに違うのは、対象と聞き方が違うためです。
| 調査 | 対象 | 時期 | 主な数字 |
|---|---|---|---|
| レバテック | 27卒エンジニア職志望の学生144名 | 2025年12月 | 就活でAIを利用 70.8% |
| 学情 | 27卒の会員学生259人(職種は問わない) | 2026年6月 | AIを利用していない 8.5% |
| マイナビ | 企業の採用担当 3,068社 | 2025年6月 | 学生のAI利用に肯定的 71.0%(64.1%と6.9%の合計) |
企業側も、学生のAI利用を一律に止める姿勢ではなくなっています。マイナビの調査で、学生が就活で生成AIを使うことについて「使い方を慎重に検討したうえで活用してほしい」が64.1%、「積極的に活用してほしい」が6.9%でした。
学生の側には不安もあります。レバテックの調査では、AIの進化で将来携わりたい仕事が代替されるかもしれないという不安を「非常に感じる」「やや感じる」が合わせて約半数(47.2%)でした。
企業選びでは、業務でAIの使用が認められていることが志望度を「上げる」と答えた人が約44%います。
ここから言えるのは、AIを使うかどうかはもう分かれ目ではない、ということです。分かれ目は、使ったあとに自分の考えと事実が残っているかです。
新卒エンジニアの求人は減っているのか
リクルートワークス研究所の調査(全国の民間企業8,200社に依頼し、3,933社が回答。2026年4月発表)では、27卒の大卒求人倍率は1.62倍で、前年の1.66倍から0.04ポイント下がりました。
情報通信業の求人数は3.6万人で、前年より900人(2.5%)の減少です。
AIを積極的に使う企業の新卒採用担当者112人に聞いたアカリクの調査(2025年9月)では、生成AIの活用で新卒の採用人数が「減少した」が55.4%、「やや増加」「大幅に増加」が合わせて26.7%でした。対象が「AIを積極的に活用する企業」に絞られた調査で、減らす企業と増やす企業が分かれています。
米国には、スタンフォード大学のチームが給与データから示した研究があります。AIの影響を受けやすい職種で働く22〜25歳の雇用は、影響を受けにくい職種の同年代と比べて19%低いというものです(2026年8月の改訂版)。
一方で、経験のある労働者には同じ差は見られず、経済全体で仕事が広く置き換わっている証拠はないとも書かれています。
数字から言えるのは、「急に減った」とは言えないが、企業ごとの差があるということです。
ESとガクチカ:整った文章は、差になりにくい
AIでESを整える学生が増えると、読みやすい書類が並びます。その分、見た目の完成度では差がつきにくくなります。
SHIFT AIが2026年5月に採用担当者503名(うち新卒採用担当275名)へ聞いた調査では、候補者が生成AIで応募書類を作っていると「感じる」の合計が、新卒採用担当で76.0%でした。AI作成と感じる理由の1位は「表現は洗練されているのに、具体的なエピソードや数字が伴っていない」で、新卒採用担当の57.4%が挙げています。
ガクチカの見られ方も変わり始めています。アカリクの調査では、生成AIの活用で「ガクチカの評価ポイントが変化した」と答えた担当者が75.9%でした。
変化した点の最多は「新しいツールへの適応力」(65.9%)で、「創造的な取り組み」(56.5%)、「テクノロジー活用経験」(41.2%)が続きます。
何を達成したかに加えて、新しい道具をどう使いこなしたかを見る企業が増えている、と読めます。
AIを使ってよい範囲について、Anthropicは候補者向けの指針を公開しています。要点は次のとおりです。
- 応募書類は、最初の下書きを自分で作り、そのあとにAIで磨く
- 実際にはしていない経験を、AIに作らせない
- 課題や面接では、案内がない限りAIを使わない
AIを使ってよい場面と、使うと評価を下げる場面を分けて考える例になります。
ESを作るときは、次の順番が安全です。
- 材料を自分で書く。何を目標に、自分は何を決め、何を試し、何が起きたかを、数字と固有名詞つきで箇条書きにします
- AIには、並べ替えと言い換えだけを頼みます。事実の追加は頼みません
- 出てきた文章に、材料にない事実が混ざっていないかを確認します
- 材料を見ずに、その文章の内容を声に出して説明できるか試します
採用側の視点:AIを使った応募書類を、企業はこう読んでいる
運営会社は、複数のIT企業の採用支援で応募書類を読む側に立っています。
AIを使った書類は、3つの点で読みます。
1つ目は、AIを使ったかどうかを判定しようとしない、ということです。判定できないものを基準にすると、選考が安定しません。
見るのは、書類の一文について質問したときに、本人がその続きを自分の言葉で話せるかどうかです。
2つ目は、他の候補者と入れ替えられない一文があるかどうかです。その人にしかない状況、数字、選ばなかった選択肢、うまくいかなかった点が書かれていれば、読み手は質問を作れます。
SHIFT AIの調査で理由の1位だった「具体性が伴っていない」は、この点と重なります。
3つ目は、エンジニア職では書類だけで判断しない、ということです。ESで差がつきにくくなった分、成果物の説明や面接での深掘りに重心が移ります。
マイナビの調査では、学生の生成AI利用への対策として「面接での質問内容を工夫する」が26.0%、「ESの内容を精査する」が10.8%でした。「対応の必要性を感じていないので対応する予定もない」は40.6%で、前年より減っています。
企業による差は大きいため、厳しく見る担当者がいる点も押さえておいてください。
SHIFT AIの調査で、AI生成の可能性が高い応募書類を理由に選考を落としたことが「ある」と答えた新卒採用担当は64.0%でした。「AI生成の可能性が高い場合は評価を下げている」も42.9%います。
一方で、AI生成を理由に落とす基準が社内にないことを困りごとに挙げた人は新卒採用担当で44.0%、AI活用に関して「明確なルールがあり周知されている」は全体で14.9%でした。疑いの目で見る担当者は多いものの、基準は担当者の判断に任されている会社が多い、ということです。
学生にとっての含意は、「AIを使うと落ちる」ではありません。具体性がなく、聞かれても話せない書類は、AIの有無にかかわらず通りにくくなる、ということです。
個人開発:AIで作ったものは「何を判断したか」で見られる
エンジニア志望の学生が個人開発を持っていく場面は増えています。
レバテックの調査では、27卒のエンジニア志望の約8割が1日以上のインターンシップに参加していました。参加したインターン先から内定を得た人は16.2%、参加後に選考へ進まなかった人は37.8%と答えています。
アカリクの調査では、生成AI時代に対応する取り組みとして「インターンシップで生成AI活用課題を実施する」を検討している企業が54.5%、「AI活用スキルを測定する選考の導入」が37.5%でした。
AIを使って作ること自体は、企業側も前提にしています。問われるのは、作ったものの中身を本人が説明できるかです。
現場のレビュー担当者に聞いた調査があります。キッカケクリエイションがコードレビューを担当するITエンジニア322人に2026年2月に実施した調査では、AI生成コードのレビューで問題だと感じた点の1位が「提出者本人がコードの内容を説明できなかった」(49.5%)でした。
2位は「動作するが、なぜ動くのか理解しにくいコードだった」(33.6%)です。
レバテックの別調査でも、ITエンジニア572名の95.5%が「今後も人間によるコードレビューは必要」と答えています。AIが書いたコードの責任を人が持つ、という考え方は現場で共有されています。
運営会社の見方では、個人開発は大きさより、判断の跡が残っているかで見ます。AIを使った個人開発には、READMEなどに次の4点を書いておくと説明しやすくなります。
- 何を作ろうとしたか。誰の、どんな困りごとか
- 自分が決めたこと。技術の選び方、画面や機能の削り方、データの持ち方
- AIの提案を採らなかった例と、その理由
- 壊れたときに原因をどう切り分けたか
コーディングテスト:AI禁止の場と、AI前提の場が並んでいる
コーディングテストでのAIの扱いは、サービスと企業で分かれています。
paizaの利用規約(2025年8月改訂)は、禁止事項に「人工知能等を使った不正行為」を挙げています。Anthropicの指針も、持ち帰りの課題や面接では、案内がない限りAIを使わないよう求めています。
評価の目的が「その人が自分で書く力」なら、AIの利用は不正にあたる、という整理です。
一方で、AIを使う前提の選考も出てきています。2025年7月にBusinessTodayが伝えた報道(404 Mediaの記事を引用したもの)によると、Metaは社内で、候補者がAIアシスタントを使えるコーディング面接の形式を開発していました。
目的は、将来の社員が働く開発環境に近づけることと、LLMを使った不正を効きにくくすることとされています。
日本では、ウィルオブ・ワークが2026年7月に、ハイヤールーの「HireRoo」を使った「AI開発スキル診断」を始めました。ClaudeやCodexなどを使いながら課題に取り組み、AIへの指示や試行錯誤の過程も含めて分析する約30分の診断です。
対象は転職希望者で、新卒向けではありません。
準備としては、次の3点が考えられます。
- 募集要項や選考の案内にある「AIツールの利用可否」を読む。書かれていなければ、事前に採用担当へ聞く
- AI禁止の場では、AIなしで書ける・読める力を見られる。基本のコードを自分で書く練習を続ける
- AI可の場では、出力を検証し、直す判断を説明できるかが見られやすい。この点は、現場のレビューの観点と重なります
AI面接:導入は増えているが、受ける側のデータはまだ少ない
学情が2026年6月に企業の採用担当者618件へ聞いた調査では、採用活動での生成AIの使い道として「面接で利用している」が8.8%で、前年の倍以上でした。AI面接そのものに加え、面接内容の記録・整理などの補助的な使い方も含む数字です。
「利用は考えていない」は30.3%で、前年の5割近くから大きく減りました。
AI面接では、何が評価されるのでしょうか。レバレジーズは、自社の「NALYSYS AI面接」について、AIが発話内容、表情、コミュニケーションの傾向を分析し、人事向けの評価レポートにまとめる、と説明しています。
準備は、人が相手の面接と大きくは変わりません。結論、理由、具体例の順で話す練習をすること、話す内容をESの材料メモと結びつけておくことが土台になります。
受験の環境(マイク、通信、静かな場所)も事前に整えておくと、本来の話に集中できます。評価結果を人がどう使うのかを、選考の案内で確認できる場合は確認しておくと安心です。
28卒が今日からできること
| 場面 | 企業が見やすいもの | 準備 |
|---|---|---|
| ES・ガクチカ | 具体的なエピソードと数字、AIを含む新しい道具への適応 | 材料メモを自分で書き、AIには整える作業を頼む |
| 個人開発 | 自分が決めたことと、AI出力の検証 | READMEに判断と失敗の記録を残す |
| コーディングテスト | AI利用可否に沿った進め方 | 案内を読み、不明なら聞く。AIなしでも書けるようにする |
| AI面接 | 話の構成と具体性 | 結論・理由・具体例で話す練習と環境づくり |
優先順位をつけるなら、次の順で進めてみてください。
- 自分が取り組んだことの材料メモを書く。数字、固有名詞、自分が決めたことを入れます
- 志望先の募集要項と選考案内で、AI利用に関する記載を確認する
- 個人開発があれば、READMEに判断と失敗の記録を足す。ないときは、小さなものを1つ作り、同じ形で記録します
- 材料メモを見ずに、ESと個人開発の内容を2分で説明する練習をする
- 志望先ごとの選考方式(コーディングテスト、AI面接の有無)を、説明会や公式の案内で調べる
AIを使うこと自体は、もう特別なことではありません。選考で差が出るのは、その材料を自分で持っていて、聞かれたときに自分の言葉で話せるかどうかです。



