エンジニアの技術面接は、形式によって見られている点が違います。システム設計ならトレードオフの説明、コードレビュー型なら保守性への目配り、ライブコーディングなら進め方、深掘りなら判断の理由です。
形式を先に知り、その形式に合わせて準備を変えるのが近道です。4つの形式ごとに、面接官が何を見ているかと、準備の具体的な手順を整理します。
一般的な質問への答え方はエンジニアの面接でよく聞かれる質問と答え方、コーディングテストはコーディングテストでAI使用OKの企業は何を見る?で扱っています。ここでは技術を見る場面に絞ります。
技術面接の4つの形式と、見られる点
技術面接は、形式ごとに評価の軸が異なります。
ある企業のエンジニアブログは、選考の形式を持ち帰り課題、オンラインコーディングテスト、ライブコーディング、ペアプログラミング面接、AI利用前提のライブコーディング、システムデザインの6つに分けています。そのうち、面接の場で対話しながら進む形式を中心に見ていきます。
| 形式 | 主に見られる点 | 準備の中心 |
|---|---|---|
| システム設計 | 要件の確認、トレードオフの説明 | 頻出テーマの練習と、自分の経験の抽象化 |
| コードレビュー型 | 保守性、バグの入りにくさ | 読む順番と指摘の言語化 |
| ライブコーディング | 進め方、説明、詰まったときの動き | 声に出しながら書く練習 |
| 過去の技術判断の深掘り | 判断の理由、振り返り | 直近の仕事の整理 |
どの形式でも、答えの正しさだけでなく、考えの筋道が見られています。筋道は、声に出して初めて相手に伝わります。
面接官は、同じ物差しで見ている
採用担当者や面接官は、面接の前に「何を見るか」を決めています。
Googleの採用ガイドは、構造化面接を、同じ職種の候補者に同じ質問をして同じ尺度で採点する方法と説明しています。質問ごとに事前に用意された追加の質問があり、強い答え・十分な答え・微妙な答え・弱い答えを分ける共通の評価表を使います。
技術面接でも、この考え方を取り入れる会社は増えています。つまり、質問の裏には評価の軸があり、その軸に沿った答えが評価されます。
運営会社の採用支援の現場でも、技術面接の評価は「できる・できない」の二択でなく、いくつかの観点に分けて見る形に整える場面があります。観点の例は、問題の分解、技術選択の理由、コードの読みやすさ、説明のわかりやすさです。
面接官は、答えが部分的に間違っていても、観点ごとに見れば評価できる点を拾います。1つの質問で全部を出そうとせず、観点を意識して話すと、伝わる量が増えます。
システム設計:要件の確認から始める
システム設計は、曖昧なお題を与えられ、全体の構成を相談しながら決めていく形式です。
ミドルエンジニアの解説は、45分の場合の進め方を次のように示しています。
- 要件の明確化(5分)
- 概算の見積もり(5分)
- ハイレベル設計(15分)
- 詳細設計(15分)
- ボトルネック対策(5分)
評価されるのは、図の上手さよりも、前提を勝手に決めず、面接官に確認しながら進められるかです。正解は1つではなく、技術選択の根拠を要件に結びつけて語れるかが問われます。
現在の規模だけでなく、10倍・100倍になったときの課題を先回りできるかも見られます。過去の運用経験を設計判断の根拠として示せると、説明に厚みが出ます。
準備の目安として、同じ解説は2〜4週間を挙げています。URL短縮、SNSのフィード、チャット、通知などの頻出テーマを8〜10個選び、各30分ほどで説明できるように練習します。
実務経験を頻出テーマに当てはめて整理するのが、現役エンジニアには効きます。たとえば自分が運用してきた通知基盤を、要件、構成、詰まった点、直した点の順で話せるようにします。
定番の解答を暗記するだけでは足りません。前述のエンジニアブログも、定番問題の模範解答は量産できるため、暗記と実力の区別は面接官の問いの深さで決まると指摘しています。
なぜその選択をしたのかを問い返されても説明できる状態にしておきます。
コードレビュー型:読む力と指摘の優先順位
コードレビュー型は、既存のコードを渡され、問題点や改善点を指摘する形式です。
コード提出後にエンジニアがレビューする選考を公開しているゆめみの記事は、評価の観点を、チーム開発を意識しているか、長期のメンテナンスを意識しているか、バグが入り込みにくい構造か、の3つとしています。メモリ効率や実行効率は「ある程度」、複雑な要件を短時間で実装できるかや特定の言語・アルゴリズムの知識は重視しない、と書かれています。
この形式では、細かい指摘を数多く並べるより、影響の大きい順に優先して話すのが有効です。バグを生みやすい箇所、変更しづらい箇所、読み手が迷う箇所の順に挙げ、なぜ問題なのかを一言添えます。
面接官は、指摘の数ではなく、指摘の理由と優先順位を見ています。理由が言えれば、指摘が面接官の想定と違っていても評価されます。
準備では、次の3つを試してみてください。
- 他人が書いたコードを、自分のレビューの観点(命名、責務の分割、エラー処理、テスト)で読む習慣をつける
- 読む前に「何をするコードか」を一言で言う練習をする
- 指摘をするときは、問題、理由、直し方の3点セットで話す
自分のプルリクエストを面接で見せる形式がある会社では、PRの目的、背景、見てほしい点を先に書いておく工夫が役立ちます。Recruitの技術ブログも、社内でレビューを依頼するときの工夫として、PRを小さく保ち、目的と背景を明記することを挙げています。
ライブコーディング:進め方を見せる
ライブコーディングは、面接官の前でコードを書く形式です。
Uzabaseのブログによると、同社の面接はモブプログラミング形式で、候補者が操作する役、社員2名が進行役と補助役を担います。お題は完成度が約60%のソースファイルで、動かない箇所や読みにくい箇所を直していきます。
流れは、状況の説明、5分間の無言のコードリーディング、処理内容の説明、約30分のコーディング、フィードバックと質疑応答です。検索は許可されています。
評価の観点は、コミュニケーション、論理的思考、調査スキル、コーディングスキルの4つです。最終的には、自分で進めつつ、必要なときに助けを求められるか(自走できるか)を重視すると書かれています。
この例で目を引くのは、完成させることを最優先にしていない点です。ジュニア層には完成までは求めず、コミュニケーションと論理的思考を重視し、経験を積んだ層には運用保守の視点をより強く求めるとされています。
準備は、書くことより、声に出すことを中心にします。
- 読んで気づいたことを、書く前に口に出す
- 仮説を立て、確かめ、絞り込む流れを言葉にする
- 分からない仕様は、黙らずに質問する
AIを使える面接では、観点が少し増えます。Canvaの面接官向け解説は、評価するのはAIの使い方の巧みさ単独ではなく、AIで強化されたエンジニアリング能力だと書いています。
AIに頼る前に自分の考えを伝え、生成物はすべて確認して理解することが、準備のアドバイスとして挙げられています。普段使っている開発環境とプロジェクトの雛形を事前に用意することも、その1つです。
過去の技術判断の深掘り:判断の理由を話せるか
過去の仕事を材料にした深掘りは、中途採用で最もよく出会う形式です。
選考官向けの解説記事(AgileHR magazine)には、コードテストの結果をもとに1次・2次面接で深掘りする例があります。点数より、どこが合っていてどこで間違えたかを重視し、何がうまくいかなかったのかを本人が把握しているかを見る、と書かれています。
職務経歴の面接でも同じです。面接官は、成果の大きさだけでなく、判断の理由と、うまくいかなかった点を自分で説明できるかを確かめます。
深掘りは、同じ話題を2問目、3問目と掘り下げる形で進みます。準備のために、直近の仕事から1〜2件を選び、次の5つを書き出します。
- 背景(何が課題だったか)
- 選択肢(他にどんな案があったか)
- 判断(なぜそれを選んだか)
- 結果(何が変わったか)
- 振り返り(今ならどうするか)
「他にどんな案があったか」と「今ならどうするか」は、書き出さないと意外に出てきません。この2つが話せると、判断を自分で行った人だという印象になります。
チームでの成果を話すときは、自分が決めたことと、チームが決めたことを分けて話します。どこまでが自分の判断かが曖昧だと、次の質問で詰まりやすくなります。
採用する側が、技術面接で見ている3つのこと
採用側が技術面接で見ているのは、技術の知識の量そのものではありません。
前述の選考官向けの解説は、複数の面接官がそれぞれ職種のプロとして判断し、全員が合格とする場合に通過、懸念が1つでもあれば基本は見送りとする運用を紹介しています。コードテストのスコアは一面にすぎず、面接では人柄や、チームで同様のことができるかを見るとされています。
こうした資料と、運営会社の採用支援の現場に共通して見える点を、3つにまとめます。
- 判断の理由が言えるか:選択を要件や制約に結びつけて説明できる
- 分からないときの動きが分かるか:質問する、仮説を立てる、調べる手順を示す
- 一緒に働く姿が想像できるか:説明が整理されていて、指摘を受け止められる
面接官は、完璧な答えを期待しているわけではありません。分からないことを分からないと言い、そこから進め方を示せる人は、入社後も自走できると見られやすくなります。
逆に、よく見られる失敗は、分からないのに推測を断定で話すことです。知っていること、推測していること、調べる手順を分けて話すと、誠実さと筋道が両方伝わります。
今日からできる準備
形式が分かれば、準備は絞れます。次の順で進めてみてください。
- 応募先の案内や面接の連絡で、形式と所要時間を確かめる。書かれていなければ、採用担当に質問する
- 直近の仕事から1〜2件を選び、背景・選択肢・判断・結果・振り返りを書き出す
- システム設計がある場合は、頻出テーマを数個選び、自分の経験を当てはめて30分で説明する練習をする
- コードレビュー型やライブコーディングがある場合は、読んだこと・考えたことを声に出しながら進める練習をする
- 面接の直前に、使う開発環境とネットワーク、画面共有を確かめる
面接の形式や評価の基準は会社によって異なります。応募先ごとに、聞く・確かめることを前提にしておくと安心です。
選考の進め方や面接の傾向は、転職エージェントから聞ける場合もあります。応募先の面接形式を確かめたいときは、IT特化の転職エージェントの比較も参考にしてください。
準備の中心は、新しい知識を足すことより、すでにやってきた仕事を説明できる形に整えることです。整理した内容は、システム設計でも、コードレビューでも、深掘りでも使えます。



